「ご、ご主人様から話を聞いていたが貴様は本当にこの世界の事に疎いのだな」
「……?」
「お前様、陰陽塾の連中は本名を隠している。細かいシキタリがある」

そうなんだ。

「術者は名前を縛られると何もできなくなるんだよ。そこの女は俺に敗北して本名を知られた。故に俺の隷属なんだよ。ここの支払いもお前持ちだ。文句言う権利はないよなぁ?お前はそれだけのことをしたんだからな」
「う、うぅぅぅぅ」

攻撃的な新城になすすべもなく机に突っ伏す百済さん。
相手が悪すぎる。
口で新城に勝てる人なんていない。
何より百済さんは僕達を見下した態度をとっていた。
気にしていない様子だった新城だけど、逆鱗に触れたのだろうか?

「身体的特徴であそこまでキレるなんて誰が予想できる?グー、しかも、グーでなんて。親にも殴られた事ないのに」

ぶつぶつと呟く彼女の言葉でなんとなーく理解した。

「言っちゃったんだ」
「ふむ」

僕と彼女は同時に新城を見る。

「慈悲は?」
「ない」
「ちなみにこの隷属期間は」
「死ぬまで」
「ひぃ!?」

僕と新城のやり取りに怯えた様子をみせる百済さん。

「さて、ふざけるのはここまでにして本題に入るぞ。転生者についてだ」

新城と百済さんが対峙した怪異。
転生者は二階堂仁衛と名乗り、僕と新城の二人と戦いを求めているという。

「二階堂仁衛という名前について情報を探っている。陰陽塾に保管があればよかったんだが」
「そんなものなかった。私に権限がないのか、そもそも陰陽塾も把握していない相手がいるなんて、はははは、私はどれだけ役立たずなんだよ」

ぶつぶつと悲しみの感情をまき散らしている哀れな女性の頭を箸で突いている彼女を止めるべきだろうか?

「奴はどういうわけか俺と雲川を狙っている。二人で行動したら現れる可能性がある。別々でって、言いたいが二人で来させるために策を講じる可能性だってある……その為に」