ファミレスの中で高くて厚みのありそうなステーキを勧める。

「ほう、これは食い甲斐がある」

ニタァとうれしそうに微笑む彼女の姿に僕はちらりと向こう側にいる女性をみる。

「しくしく」

何かに対して受けているダメージが抜けていないのだろう、僕達がファミレスで高いものを選ぼうとしても止める気配がない。
まぁ、新城を怒らせている時点でよくない事をしたんだろう。
甘いものを食べたい気分だったからおいしそうなマンゴーパフェを選ぼう。
ちなみに、彼女はWステーキセットだった。

「ところで、その隣の人って」

運ばれてきた料理を食べた所で僕は話を切り出す。

「下僕」

パフェの最後の一口を食べ終えた所で新城が一言で説明する。

「下僕って……?」
「認めん!」

両手でテーブルを叩きながら立ち上がる。
よくみたらこのメイド服の人って陰陽塾の人じゃ?

「私はこんな結果を」
「座れ」

新城が一言。
それだけで彼女は見えない手で押さえつけられたように着席する。

「グダグダとうるさいんだよ。いつまでも負け犬が吼えるな」
「えっと、何があったの?」
「相手の実力を見切れないアホ女が噛みついてきたから完膚なきまで叩き潰した。そして、俺に隷属させた。それだけの事だ」
「それだけって」

少し別行動をしている間に一体、何があったんだろう?
新城の言葉に顔を赤くしたり青ざめたりしている彼女の様子からして色々とあったみたい。
怒らせるような事をしたんだろうなぁ、新城の逆鱗に触れるような事。

「それで、話って」
「その前に、おい、アホ女。自己紹介」
「……誰が」
「自己紹介しろ。三度目はないぞ」

冷めた目を向けられてビクリと体を振るわせながら彼女は挨拶をする。

「陰陽塾所属の百済光栄だ」
「何か、男みたいな名前ですね」