「待たれよ」

名乗ろうとした新城を二階堂は止める。

「礼儀正しいことは好感が持てるが、お主らは二人で一つであろう?次に拙者と相まみえる時に名乗っていただこうか!」
「それは、どうも」
「失礼させてもらう」
「!!」

声を発することが出来ないまま陰陽塾の女が駆け出す。
彼女の繰り出した薙刀は空を切る。

「逃げたな」

黒笠の気配が無くなった事で新城は指を鳴らす。

「あ、喋れる」

術を解除した事で喋れなくなっていた陰陽塾の女の口から言葉が出る。

「貴様、どういうつもりだ!?たかが祓い屋の分際で」

我慢の限界だった。
新城凍真は拳を作ると軽く地面を蹴る。

「え?」

間抜けな声を漏らしている陰陽塾の女の頭。
その上に全力のゲンコツを落とした。

「ギャン!」

悲鳴を上げて地面に倒れる陰陽塾の女。

「おい」

低い声で新城は倒れた陰陽塾の女の髪を掴む。
女の髪は命と言われる程、大事にしなければならないが我慢の限界を迎えた新城にとってそんなことはどうでもいい。

「黙っていれば上から目線で偉そうに。井の中の蛙大海を知らずっていうが絡む相手の実力すらわかんねぇ奴程、愚かな奴はいないよなぁ?」
「き、貴様」

顔を真っ赤にしながら陰陽塾の女が懐から素早い動きで札を取り出す。
式神を発動しようとした所で新城が目を瞬く。

「なっ!?術式が強制中止!?」
「何をそんなに驚くよ。眼術もしらないのか?ただ声や札を使えばいいってわけじゃねぇんだよ」

陰陽塾の女は式神札と薙刀のみ。
戦いながら相手の動きを観察していたがどうやらその事すら気付いていないらしい。

「自分の手持ちが二つだけなんて自信があるのかバカなのか知らないが、二流、三流も良いところだな」