驚いて固まっている陰陽塾の女目掛けて振り下ろされる刃。
薙刀で構えようとしているが遅い。

「仕方ねぇな」

握りしめていた石を投げる。
目を見開きながら黒笠は後ろへ跳躍した。

「カッカッカ！霊石による力の半減をもくろんだか！？だが、この程度」
「その程度、誰だって予想できるだろう？」

新城の言葉に黒笠の怪異は前に踏み込む。

「いらっしゃーい」

懐から新城が取り出したのは一振りの短刀。

「霊石にみえただろう？それは巧妙に作った偽物なんだ。ほんの少し力を込めたらそうみえるように作るのは苦労したよ……ンで、こっちが本命」

突き出される刃。
新城の力を込めればより力を発揮する刃であり、怪異対策に特殊な水や色々なもので生成されている。
それは真っすぐに黒笠の怪異の体を貫く。

「カッカァ！」

額に直撃コース。
刃が黒い何かに阻まれた。

「あ？」
「惜しい！実に惜しい！」

笑いながらくるりと回転して距離をとる黒笠。

「流石は転生体というべきか？」

パラパラと砕け散る刃をみて新城は短刀を投げ捨てる。

「お前、本当になんなんだ？人じゃありえない身のこなし、噴き出す呪とか」
「ほぉ、貴様、素敵な目を持っているな。この時代にそんな目を持っている者がいるとは、なんだろうなぁ、あぁ、そうだ。この感覚……」

手で目の周りをごしごしと擦る黒笠。
強い力でこすり続け、皮膚が抉れ、血がドバドバと地面へ落ちていく。
あまりの光景に新城は顔を顰め、青ざめた顔で陰陽塾の女は動けない。

「あはぁ、あぁ、思い出した懐かしい、とても古い記憶。そうだ、お前のような奴を祓う者、そうだそうだ、そして、そんなお前を守る為にいた守りて……ソイツだ、ソイツを求めていたのだ！」

血涙のように目の下の抉れた皮膚を笑顔で歪めて黒笠は嗤う。
ブンと刀を一振りして黒笠は体から黒い瘴気を放つ。