「霊脈が乱れているな。これも転生体とやらの仕業なのか?」

その日の夜。
新城凍真は一人、夜道を歩いていた。
彼の片目は地面、霊脈の流れを調べている。
黒笠の転生体と遭遇してからというものの、霊脈の流れがおかしくなっていた。
祓い屋であり、時に霊脈の力を用いる新城にとって、穢れや流れがおかしくなることは見過ごせない。
それ故に札や道具、霊脈へ力を流し込んで浄化を試みていた。

「これで元通りか……」

霊脈の流れの最終確認を終えて新城は帰路へつこうとした。

「っ!」

背後から気配を感じて振り返る。
咄嗟に一枚の札を取り出して投擲。
札が空中で切り裂かれる。

「カッカッカ!強い気配を感じて来てみれば、祓う方か」
「あぁ、最悪だ」

暗闇の中からゆらりと現れるのは黒笠。

「一応、理性があるのなら伺いたいんだが、アンタ……何しに来た?」
「拙者の望みは果たせなかった強者との戦い。血沸き肉躍る戦いよ。お主も中々に強いが、求めるほどの強さではない」

黒笠の向こうで目を細める。

「お前の求める強さ?」
「カッカッカ、術者としては最強の部類だろう。だが、拙者の求める強さは守りての方!そして」

振り返らずに黒笠は腰の刀を振りぬいた。
刃同士がぶつかる音が新城の耳に届く。

「陰陽塾の」
「忠告を無視するから!!」

薙刀を振るいながら札を取り出して黒笠へ放つ。
札が変化して獅子になり、顎が黒笠を捕えようと迫る。

「ふぅ」

黒笠の下でため息を漏らしたと思うと一閃。
一撃で獅子が破壊された。

「なっ!」

あまりの光景に陰陽塾の女が驚きの声を上げる。

「まぁ、そうなるよな」

陰陽塾の女が驚いている傍で新城はため息を吐きながらポケットから数個の白い石を取り出す。

「この程度の猛者など、拙者の生きていた時代に山ほどいた。慢心している奴はあの世で学べ!」