あぁ、もう。
僕は千佐那の腕を掴むと傍まで引き寄せる。
あまり近づかせなかったパーソナルスペースまで彼女を迎え入れた。

「お前様!?」
「反省をやりすぎても良いことはないよ。悪いと思った後は次に活かそう。それが反省した後にやることだよ」
「そうか……そういうものなのか」

千佐那はそういうと僕の腕を見る。
僕の腕?

「お前様といると温かい気持ちになるな。本当に」

ぎゅぅぅぅと強く抱きしめられて腕が、腕が痺れてきた。
見た目は美少女だけれど、相手は鬼。
本気を出せば僕の腕なんか粉々に。

「おっと、力加減」

力強い抱擁から解放されるけれど、腕はまだ痺れている。

「ふふふ、お前様といると楽しいし勉強になるな」

小さく微笑む彼女。
いつもの無表情と違ってどこか儚い美しさというのだろうか?
そういうものが含まれていて少し。

「ハッ!」

いけない、いけない。
新城の言葉を思い出して解放された隙に距離をとった。

「フフフフ」

小さく笑っているけれど、その目は餌を前にした獣の様に思える。
気のせい、にしたいなぁ。

「さ、さぁ、帰ってご飯にしようね」
「ご飯、あぁ、そうだな」

うんうんと頷きながらぺろりと舌なめずりするのやめてもらえるかな?
本当に怖くなるんだけど。