「ふむ、これは厄介だね」

学校の中庭の片隅にある自販機。
そこで僕と新城、そして特別クラスの責任者である工藤先生がいる。
工藤先生は新城と同じ祓い屋で、新城にとって師匠のような立ち位置の人。
三人で話をしている内容は千佐那が持ってきた手紙の内容について。

「えっと、手紙に何が書いてあったんですか?」
「手紙の内容は転生者が現れた事だ」
「転生者?」
「普通に生きていたらまず遭遇することのない相手だな。俺達祓い屋ですらその存在については可否がわかれている」
「雲川君、転生という言葉は知っているかな?」

工藤先生が授業で教えるように話をしてくれる。

「えっと、死んだら別の生物に生まれ変わるって話だったような?」
「元はサンスクリット語のサンサーラが由来の用語でね。命あるものが人だけでなく動物などを含んだ生類に生まれ変わることなんだけど、僕達、祓い屋にとって転生はある術を現すんだ」
「術?」
「輪廻転生の術」

壁にもたれてチビチビとぐんぐんゴーゴーと呼ばれる乳酸菌を飲んでいた新城が教えてくれる。

「何、その術?」
「禁忌とされている術だよ。人を転生体と言われる上位種族に生まれ変わらせるもの……」
「そもそも、転生体というのは何なのですか?」
「簡単に言えば、人ではないもの……かな?怪異の枠組みに入るものだけれど……力も何もかもそのすべてが一線を越したもの」

いつも通りに話してくれる工藤先生。
だけど、その声はどこか真剣みを帯びている。

「転生体は過去に二度、出現が確認されている……一つは平安時代、尤も、その詳細はすべてが失われていてわからない。二つ目は江戸時代、名だたる剣客達が魔の誘いを受けて転生体となった。多くの祓い屋や剣客達が戦いを挑み、江戸城をはじめとした町は大火に包まれたという」
「そんな事が」