俺は、生きている時、病気だった。心臓の病気で、小学校へ行き始めて間もない頃に、入院生活となってしまった。
心臓の病気とはいえ、段々と進化していく医学があったため、なんとか生きていられた。
病院では車イス生活だったけれど、まあまあ充実していた。けれど、中学生ぐらいからか、学校に行きたくなってきた。
入院しているから勉強をしなくていいなんてことはもちろんない。でも、「学校」という雰囲気が、俺は憧れだったのだ。
学校へ行きたくなってくるにつれて、病気の進行も徐々に落ち着いてきた頃。
俺が「学校に行きたい」と呆れるほど院長先生に言ったら、一年に二、三回ほどだったらいいと許可をくださった。
その時から、一年に二、三回スパンでの登校が始まったのだ。
そして、中学三年生になった。
すると、隣の部屋に同い年くらいの男子が入院してきたのを何度も見た。ずっと入院してるわけではなく、何度も、何回も。
俺は、そいつと話したくて、そいつの部屋にこっそりと行ってみた。そいつの部屋は、真夏なのに、とてもひんやりとしていた。
「…おい、おまえ、一人?」
窓の外を見ていたそいつは、こちらに振り返った。肌が色白く、やせていた。目がぱっちりとしていて、俺の全てを見透かすような、深い色の黒目。
「ひ、一人、だけど」
「じゃあ、話そうぜ」
そいつの名前は、美波といった。これが、後の時雨である。
俺は、美波に色々訊いた。学校には行っているものの、体調を崩しやすく、無理をすると入院になってしまうらしい。別の病院から来たというが、ここはこの町で一番大きい病院だ。悪化して、こちらへ来たのだろう。
俺は、そんな美波と、友達になった。
美波の部屋は、静かで青い。そんな中で、窓際に置かれたひまわりが、青空に向かって微笑んでいた。
高校一年生になり、俺の病気は、悪化していった。美波は相変わらず入退院を繰り返している。
同い年の美波と俺は、同じ高校に特別入学。
その年の夏の登校。
俺は看護師さんに付き添われて、学校に行った。屋上で、急に猛烈な苦しさを覚えた。
「…日照くん?大丈夫?」
看護師さんが、何かに気付いた様子で、俺の車イスをガサゴソといじった。そして、俺の手を握る。
冷たい。
俺は、もう死ぬんだ、と感じた。そして、大切な人の顔を思い浮かべて、青空の下で眠った。
その後、どうなったのかはわからない。ただ、病院に運ばれた時、死にたくないという思いが強くなり、幽霊となった。
どうして俺が幽霊になったのかは、まだわからない。ただ、美波と交わした約束があったのかもしれないと思う。
美波と何か交わした約束があった。だから、時雨と出会ったのも、なんとなく辻褄が合う。
俺は、自分の成仏には美波が関係しているのだと、確信する。