夏休みを目前として騒いでいるクラスの居心地は、本当に嫌いだ。
「ねぇねぇ、夏休み空いてる日さぁ、みんなで遊び行かない!?」
「いーねー、どうせならこーんな空っぽ田舎町から飛び出して県外とか行っちゃう?」
「そーしよーぜ!おい時雨、おまえも行く?」
「行かない」
ざわざわしているのでさえ嫌だというのに、おまけに声を掛けられるなんて、まじで最悪なんだが。
そんなことは言えないので、スパッと断った。行かない。俺はお前らと遊びになんて行かない。
「えー、葉鍵が来ればクラス全員揃ったのにー。残念」
俺はそんな言葉を無視して、気づかれないように教室を抜け出した。
外の空気を吸いたい。なので、屋上に行く。
人気がないことを確認して、階段を登る。カン、カンと、自分の足音だけが響く。
ドアをそっと押すと、熱風が俺を包み込んだ。
一歩踏み出して、青空が広がった。と、思った。
だれかが、いた。
確かに人の気配はなかった。物音も何もしなかったはずだ。
そいつは、俺を見て、こう言った。
「…久しぶり。俺のこと、覚えてる?」
「え…っと、ど、どちら様…?ごめんなさい、俺、あなたと話したような記憶が思い出せないというか…」
本当に、誰だか何もわからない。知らない。
「俺のこと、よく見てみ」
なにもないけど、と言いそうになった。すると、ぞっとした。
「…透けてる」
「そう!正解!っていうことは、つまり?」
「幽霊…!?」
「イェス!!まじ!?俺のこと、視えてる!?」
怖い。そういう思いが、とっさに頭をよぎった。しかも、幽霊って、こんなに明るい感じなんだっけ。
そして俺は、この高校に伝わる都市伝説を思い出す。
「おまえ、もしかして、『18年前屋上で死んだ男子生徒の幽霊が出る』ってオカルト好きの奴らの間で話題だった、あの…。ヒデリくん…!?」
俺はそう言って、ヒデリくんであろうそいつの体を見つめてみる。やっぱり、向こう側の風景が見えている。ぼやっとしているが、これは間違いなく透けているのだ。
「へぇ~、俺はそんな都市伝説までつけられちゃってんだ。有名人じゃん、すげぇ俺」
てか名前本名だし、と言って、ヒデリくんはこちらを向いてけらけらと笑った。そして、自己紹介をし始めた。
「俺の名前は、穂野日照。16才の時にこの屋上で死んだ幽霊だ」
日照は、「お前は?」と俺に訊ねてきた。
「…俺は葉鍵時雨。高一。もちろん生身の人間」
「それはわかる、てかそれ以外もわかる」
日照はそうに言った。なんで、それ以外もわかるんだろうか。
「ねぇねぇ、夏休み空いてる日さぁ、みんなで遊び行かない!?」
「いーねー、どうせならこーんな空っぽ田舎町から飛び出して県外とか行っちゃう?」
「そーしよーぜ!おい時雨、おまえも行く?」
「行かない」
ざわざわしているのでさえ嫌だというのに、おまけに声を掛けられるなんて、まじで最悪なんだが。
そんなことは言えないので、スパッと断った。行かない。俺はお前らと遊びになんて行かない。
「えー、葉鍵が来ればクラス全員揃ったのにー。残念」
俺はそんな言葉を無視して、気づかれないように教室を抜け出した。
外の空気を吸いたい。なので、屋上に行く。
人気がないことを確認して、階段を登る。カン、カンと、自分の足音だけが響く。
ドアをそっと押すと、熱風が俺を包み込んだ。
一歩踏み出して、青空が広がった。と、思った。
だれかが、いた。
確かに人の気配はなかった。物音も何もしなかったはずだ。
そいつは、俺を見て、こう言った。
「…久しぶり。俺のこと、覚えてる?」
「え…っと、ど、どちら様…?ごめんなさい、俺、あなたと話したような記憶が思い出せないというか…」
本当に、誰だか何もわからない。知らない。
「俺のこと、よく見てみ」
なにもないけど、と言いそうになった。すると、ぞっとした。
「…透けてる」
「そう!正解!っていうことは、つまり?」
「幽霊…!?」
「イェス!!まじ!?俺のこと、視えてる!?」
怖い。そういう思いが、とっさに頭をよぎった。しかも、幽霊って、こんなに明るい感じなんだっけ。
そして俺は、この高校に伝わる都市伝説を思い出す。
「おまえ、もしかして、『18年前屋上で死んだ男子生徒の幽霊が出る』ってオカルト好きの奴らの間で話題だった、あの…。ヒデリくん…!?」
俺はそう言って、ヒデリくんであろうそいつの体を見つめてみる。やっぱり、向こう側の風景が見えている。ぼやっとしているが、これは間違いなく透けているのだ。
「へぇ~、俺はそんな都市伝説までつけられちゃってんだ。有名人じゃん、すげぇ俺」
てか名前本名だし、と言って、ヒデリくんはこちらを向いてけらけらと笑った。そして、自己紹介をし始めた。
「俺の名前は、穂野日照。16才の時にこの屋上で死んだ幽霊だ」
日照は、「お前は?」と俺に訊ねてきた。
「…俺は葉鍵時雨。高一。もちろん生身の人間」
「それはわかる、てかそれ以外もわかる」
日照はそうに言った。なんで、それ以外もわかるんだろうか。