成仏されて、美波と再会した。あいつ、変わってなかったな。
美波は、俺の話をたくさん聞いてくれた。そして、俺にも、たくさんの話をしてくれた。
一応、美波と話せても美波の後世は時雨なので、少し忙しそうだった。けれど、話そうと言ってくれて、うれしかった。
美波によると、日照がこっちへ来てくれてよかったとのことだった。
時雨と俺は、今繋がっているとしても、所詮人間と幽霊という大きな違いがある。あいつは年を取るけれど、俺は死んだ時のままで止まっている。進みもしなければ、退化もしない。
そんな違いがあるから、美波は
『まさか時雨に成仏を頼むなんて、思ってもなかったよ』
と言っていた。でも、それ以外の方法があったのだろうか。
結局、お許しが出て時雨が二十才の夏にまた会っていいことにはなったけれど、その一日だけだ。その世界にいられるのは。
美波と話しているうちに、涙が出てきた。なんの涙かは、ハッキリしない。
美波は、どんな涙なのか、わかっていたのだろうか。
そっと、肩をさすってくれた。
すると、涙がどんどんあふれてきた。そして、生きている時のことを、思い出す。
俺は、小さい頃は弱かった。心も体も、どちらも。
病気が悪化傾向にあると、すぐに泣いた。俺って、ずっとこのままで、治らないの?と。
そんな泣いている俺に、ある看護師さんが
『泣かないで。これから良くなるように、一緒に頑張ろうね。そしたらきっと、元気になるよ』
と言ってくれた。
いい言葉だな、と思うけれど、俺はその時から、「泣かないで」って言葉が嫌いになった。
泣いてる時って、すごく感情的になる。でも、こぼれる涙があればあるほど、心にある苦しい思いとか悲しい、不安なんかの黒い気持ちがなくなっていく。
だから、泣き止んだ時って、気持ちがリセットされて、もう一度がんばろう、と思えるのだ。
すると、胸いっぱいに吸い込んだ空気が、すっと体にしみわたってきて、力がみなぎる。
だから、俺の両親は、
『泣くだけ泣きなさい。そして、ちゃんと頑張るんだよ』
と言ってくれたのだ。
そして、美波も言ってくれたのだ。
だから、時雨にも、言ってあげたかった。辛い過去があって、胸が苦しくなった時は、泣いていいんだよ。
そして、一緒に頑張ろう。俺たちが、ついてるから。
でも、もう時雨は、この四年間で変わっているかもしれない。そんな言葉、もう必要ないかもしれない。
そんな時雨だったら、心から笑ったあいつの顔を見たいと思った。