—夏って、三つに分かれるらしい。
じゃあ俺らって、今、夏のどこにいる?
そんなことを思いながら過ごした16才の夏に、今日は一度戻ることにした。
あいつと交わした約束を、今日、共に果たそう。
「ミーンミンミンミンミーン…」
蝉の鳴き声が、やけに大きく感じた。
今日は、この特に栄えていない田舎町に、久しぶりに帰郷してきた。都会より、空気が澄んでいる。
子供の時は感じなかったけれど、この田舎町は美しいと感じる。空を見上げると、ふと、あいつの顔が頭に思い浮かんだ。
「…あいつ、元気してるかな」
独り言を呟いて、実家までとぼとぼ歩く。すると、見覚えのあるような顔の女性が、一人歩いていることに気がつく。
「…あ、葉鍵くん、帰ってきたんだ。久しぶり」
それは、高校の時の同級生、黒井戸だった。
「うん。黒井戸こそ久しぶり。もうすぐ、夏も後半だから」
「そうだね。もー、暑くて溶けちゃいそうだよ。まぁ、リフレッシュしていってね」
「ありがと。…じゃあ、また」
黒井戸は、またねと手を振ってこの場を去った。
たまに吹くひんやりとした風に期待を抱きながら、またあいつのことを思う。
あの日のこと、出会った日のこと。全て、俺は信じている。
俺は、あの日に交わした約束を、果たしに来た。
それであいつと本当の別れとなる道に進まなければいけなくても。もう二度と会えなくなっても。
あいつと過ごした、目がくらむほどの麗しい日々は、ずっとここに残り続ける。
確かでない未来を片手に、限りない可能性を掴もうと必死に駆けた、あの夏。
あの夏に交わした、あの約束を。今夜、君と共に。
じゃあ俺らって、今、夏のどこにいる?
そんなことを思いながら過ごした16才の夏に、今日は一度戻ることにした。
あいつと交わした約束を、今日、共に果たそう。
「ミーンミンミンミンミーン…」
蝉の鳴き声が、やけに大きく感じた。
今日は、この特に栄えていない田舎町に、久しぶりに帰郷してきた。都会より、空気が澄んでいる。
子供の時は感じなかったけれど、この田舎町は美しいと感じる。空を見上げると、ふと、あいつの顔が頭に思い浮かんだ。
「…あいつ、元気してるかな」
独り言を呟いて、実家までとぼとぼ歩く。すると、見覚えのあるような顔の女性が、一人歩いていることに気がつく。
「…あ、葉鍵くん、帰ってきたんだ。久しぶり」
それは、高校の時の同級生、黒井戸だった。
「うん。黒井戸こそ久しぶり。もうすぐ、夏も後半だから」
「そうだね。もー、暑くて溶けちゃいそうだよ。まぁ、リフレッシュしていってね」
「ありがと。…じゃあ、また」
黒井戸は、またねと手を振ってこの場を去った。
たまに吹くひんやりとした風に期待を抱きながら、またあいつのことを思う。
あの日のこと、出会った日のこと。全て、俺は信じている。
俺は、あの日に交わした約束を、果たしに来た。
それであいつと本当の別れとなる道に進まなければいけなくても。もう二度と会えなくなっても。
あいつと過ごした、目がくらむほどの麗しい日々は、ずっとここに残り続ける。
確かでない未来を片手に、限りない可能性を掴もうと必死に駆けた、あの夏。
あの夏に交わした、あの約束を。今夜、君と共に。