「(おーいっ!ちーーくん!)」



誰にも聞こえない声で、
私、三上さら(みかみさら)は。



幼なじみの男の子、ちーくんこと、
柳瀬千夜(なやせちよ)くんの名前を呼んだ。



「っ、はー、バカ、可愛すぎ、」



誰にも見えないのに。



誰にも聞こえないのに。



照れながら、
そんな言葉を言うちーくんは。



周りの人から見たら、
きっと、ちょっとヤバい人。



「(ふっ、ちーくんだってカッコいいよ!)」



ちーくんの耳元にそっと近寄って、
声をかける私は、きっと確信犯。



「ばっ、寝言は寝て言え!!」



周りに誰もいないのに、
大声でそう言ったちーくんは、注目を浴びた。