「浅山、放課後空いてる?」
教室移動しようとしている浅山を引き止める。
「空いてるけど、なんで?」
「渡したいものがあるから公園来て。」
なるべく短く伝えて横を通り過ぎる。
前方には圭がいるがとても話す気分じゃない。
彼女に犯人を責めないでって言われたから何もするつもりはないがやはり話しかけようとは思えない。
静かにため息を付いて歩く。
廊下は楽しげな声で溢れていた。
彼女の死なんて無かったことのようだ。少しづつ廃れて忘れられてしまうのだろうか。
そう思うと複雑な気持ちになる。ものはいつか廃れることなんて知ってる。けどこんなに早くその日が来るとは思ってもみなかった。
明るい廊下の中、1人静かな世界を歩いた。


まだ夕方だっていうのに子供1人いないこの公園の時計の下、制服を着た高校生が立っているのは変だろうか。
あまりにも早く来てしまった。
右手には彼女に貰ったお守りを握りしめていた。
そういえば彼女の最後の手紙には不可解なこが二つあった。
自分自身の命よりも大切な“その人”とは誰なのか『“男の人”を好きになれない』という言葉。
浅山との会話で知りたい。
公園の入口に女子高校生の姿が見えた。その人は俺から一定の距離をとって止まった。
「何?渡したいものって。」
気まづそうな顔をした浅山を見てから右腕を伸ばす。
その動作に少し驚いたのか浅山が半歩後ろに下がった。俺は気にせず手の中のあったお守りも見せた。
「開けてみろよ。」
ぶっきらぼうに言った。
浅山は何も言わずに俺の手からお守りを取りその中身を出した。
やがて見えてきた紙をゆっくり開いてその紙の正体を目にした時、浅山の目が大きく開いた。
読んでいるのかしばらく紙を眺めていたら急に浅山の目から涙が出てきた。
俺は浅山宛の手紙を読んでいないから何が書いてあるのか分からない。
嗚咽しながら苦しそうな顔をしていた。その後、ようやく止まった涙を拭って口を開けた。
「これ、もう見た?」
声が震えている。
「お前宛じゃん。見てねぇよ。」
やはり彼女を死に追いやったやつに優しい態度は取れない。
「じゃあさ、これ三河くんにも見て欲しい。」
かすれた声で言っていた。手を伸ばして手紙を受け取る。
そこには俺宛の手紙とは違う色々な事実が書いてあった。