四葉が死んでから1週間。
警察が調べた結果、四葉の自殺の原因は過度な勉強のストレスということになっていた。
だが警察はこの事案についてきちんと調べていない。
1年間の自殺者は100や200じゃない。だからしっかり調べていたいたらキリがないんだろう。
だからって勉強のストレスはないだろ。
四葉は勉強を嫌がる俺に何回も勉強は楽しいものだと俺に教えてきた。
つまり原因は別にあるはずだ。
そんなことを考えるといつも行けていたはずの学校という場所に行けない日が続いてしまった。
四葉と付き合っていることを親は知っていたから休むことを止めはしなかった。
毎日ベッドに寝転んでただひたすら天井を見る。
こうやって1人でいる時間が長いと自然と思考もネガティブになってしまう。
もう四葉が帰ってこないことなんて分かっている。
でもどうしても生きていて欲しかった。
なのに四葉について知らないことが多かったのも事実。その事実が受け入れがたくて嫌だった。
どこまでが本当なのか分からなくなっていた。

四葉は俺にたくさんの嘘をついていた?

俺が見ていたのは本当の四葉だった?

俺は本当に四葉の彼氏になれていたのか?

四葉は俺のことを愛していたのか?

もしくは俺はそんな四葉がそばにいる幻想を見ていた?

そんな疑念に包まれ、心の内で悩み続ける。しかし、その悩みはますます深刻化していくばかりで心には雲がかかる。
分からないことが多すぎる。
正直蒼という人物に会っても解決する気がしない。
それよりももっと手持ちの情報を増やしてから彼に会いに行った方がいい気がする。
グルグルと考えが頭を巡る。
そしてやっと学校に行く決心がついた今日。
いつもの5倍くらい足取りが重い。
どんな顔をして教室に入ればいいだろう。
目の前には少しだけ古そうな扉。
この扉を開ければたくさんの机と椅子が広がっている教室だ。
深呼吸して扉に手をかけ開けた。
クラスメイトは驚いたような顔をした。そしてその後すぐに俺を酷く哀れんだ顔をした。
俺が四葉と付き合ってることを知ってるから当然だと思うがやはりこの目線は気分が悪い。
俺が椅子に着くまで視線だけが送られた。
気持ち悪い。
そんな顔で見るな。
俯いて必死に祈った。この顔をあげた時誰も俺を見ていないことを。
「よぉ。久しぶりじゃねえか。」
突然上から聞きなれた声が降ってきた。
訝しげに顔をあげる。
そこにはいつものように笑っている圭がいた。まるで病気で休んでいた友達に話しかける口調。
心が軽くなり無性に嬉しくなった。
やっぱり圭は良い奴だ。そう再認識した。
その後も圭はずっと俺のそばにいてくれた。
世間話をして、ゲームの攻略法を考えて。
それだけで曇りのように暗かった心の中が澄みきった晴れに変わった。
とりあえず今日の夜、もう1度浅山に聞いてみよう。
今日は浅山を見かけなかったから。もしかしたらまだ立ち直ってないのかも。
そう思い浅山にメッセージを送る。
《もう1回四葉について聞きたいんだけど良い?》
10分くらいたっただろうか。通知が鳴った。
《ごめん、電話でもいい?8時とか。》
《分かった。8時な。》


家に帰るとこんなにも気分が変わるのか。
圭のおかげで1度は晴れた心も家に帰るとまた影がかかった。
8時までの時間ががこんなにも長く感じるとは思わなかった。
SNSを眺めても何の刺激もなく、課題をやる気力も失われている。
ただ窓の外をぼんやりと眺めたり、死んだようにテレビを見つめたりしていた。
ただ絶対にテレビはずっとつけていた。
なにか音が鳴っていないと落ち着かなった。邪念が頭によぎって苦しくなる。何回も吐きそうになった。ゲホゲホと咳をし壁に手をつく。ここまで精神的なダメージが体の不調に繋がったことは無かった。
何度も祈った。これが悪い夢であると。
でもいくら自分の頬を引っ掻いたりしても四葉がいる世界に戻ることは無かった。

8時。浅山からはまだ連絡がない。
何分か経ち、メッセージが届いた。
《ごめん!!急な用事ができちゃった。また今度でも良い?》
嘘だろ。聞きたいことがまだあったのに。
「クソッ」
すぐ横にある壁を1発殴る。それでも心は晴れない。
《分かった。》
平然を装い返す。急な用事ってなんなんだろうか。