俺の彼女は可愛い。とても可愛い。多分この世にいるどの女性よりも魅力的。絶対に手離したくない。
「じゃ!紫苑くん、また明日ね?」
彼女とは今年の春に付き合ってもう3ヶ月だ。
だけどこの、何もかも見透かしたような綺麗な瞳には慣れない。
少し目を離したら俺の手から消えてしまいそうで怖い。
そんな所も愛おしいが。
「はぁー…四葉が可愛すぎる。」
ため息のように口からこぼれた。その声が聞こえたのか彼女がニヤニヤしだす。
「へー?紫苑くんはそんなに四葉ちゃんが好きなんですねー?へー?」
聞かれたと思うと恥ずかしくなってそっぽを向いて応える。
「悪いかよ…」
これしか言えない。否定なんてもってのほかだ。彼女は本当に可愛い。全てが大好きだ。
「嬉しいっ!」
彼女の満面の笑みは愛おしい。綺麗で、触れたら壊れそうだ。
「そうだ!そんな紫苑くんにこれをあげるよ。」
彼女は俺の手をとって手のひらに小さなお守りを置いた。紺色の布地に歪な形で御守りと黄色の糸でかいてある。
手作りかな。
「何…これ、お守り?」
「そう!あ、でもこれね?“まだ”中身見ちゃダメだからね。私がいいよって言うまで。」彼女はそう言って満足気にスキップしながら自分の家がある方向に向かった。
可愛い。
彼女から物を貰うのは初めてだったら困惑する。
嬉しくて嬉しくてしばらく彼女の背を眺めていた。
その後我に返って彼女が行った方向とは逆の俺の家がある方向に向かって歩き出した。
何度彼女と家が隣だったらと想像したことか。
「ごめんね、愛してるよ紫苑くん。」
朝、学校への登校中。電車に揺られながらスマホを見ていたら彼女からメッセージが来た。
なんだこれ。ごめんねってなんだ。しかも急に愛してるよなんて。嬉しいけども!!
「どうしたの?」
「何かあった?」
そう送って少し心配だが連絡アプリを閉じて音楽アプリを開いてワイヤレスイヤホンに音楽を流す。
学校でどうしたのか聞こう。
学校に着くとまだ彼女は来てなかった。いつものように友達の圭が近くに来た。
「おい!何これー?こんなキーホルダー付けてなかったよな?まさか彼女からですかー?」
彼女から貰った御守りが嬉しすぎて通学バックに付けてしまった。
「そ。」
彼女に対する態度とは対称的に素っ気ない返事をする。
「はーー??ざけんな、リア充が。」
そう言い放った圭が俺の足を軽く蹴った。
圭はゲームで仲良くなった良い友達だ。
ガラガラガラと少し古いドアを開けて学年主任の先生が入ってきた。
いつもは担任なのに学年主任とは珍しい。
「皆さん、体育館に集まってください。」
何やら深刻そうな顔つきだった。
説教かな。朝からはさすがにダルい。
ダラダラと地下1階の体育館に集まるともう他のクラスは来ていた。うちで最後のようだ。
すると校長先生が出てきてマイクを手に取り深呼吸する。
校長が説教にわざわざ出てくることはないだろう。
なんだなんだと張り詰めた空気が流れる。
【月野四葉さんが亡くなりました。】
は?
校長は俯いて何かを堪えていた。
何も理解できない。頭が真っ白。死んだ?四葉が?なんで?
「今朝の8時10分頃、自分の部屋で首を吊っていたところを発見されたそうです。詳しいことは言えません。まだ警察の調査中です。」
ふざけんな。
ちらほらと泣く声が聞こえる。左前には四葉の親友、浅山美来が俯いて泣いていた。
俺は泣くことも出来なかった。
あまりにも衝撃だった。何も考えることが出来ない。
その後校長が四葉の家族などに詮索するなとか言っていたようだが上手く聞き取れなかった。
悲しいとは思いますが。
月野さんはいつでも素敵な人で。
受け入れ難い事実ですが。
なんだよそれ。
そんな綺麗事なんて要らねえよ。
だったら四葉を返して欲しい。
あまりにも早すぎる死だ。
受け入れたくない。
もう1回笑って欲しい。
あの瞳で見て欲しい。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。なんで四葉なんだ。おかしいだろ。
胸に重い重りが乗ったような感覚に陥った。そして頭の中に四葉の死への否定の言葉が流れ込んでくる。
それも、もうたくさん。
ちゃんと考えられるようになった時にはすでに俺は家にいた。四葉が死んだ。
なんでだよ。
「なんで自殺なんて…自殺…?」
確かに校長は四葉は自殺したと言った。なんの理由も無しに自殺するやつは到底いない。
それなら当然四葉にも首を吊った原因があるはずだ。もしそれが誰かのせいなのだとしたら?もし故意に四葉を追い込んだ人がいたら?まだ原因が人なのかすら分からない。けれど調べる価値はあるはずだ。
そうだ。親友に聞いてみよう。親友なら何か知っているかもしれない。親友の浅山美来は月をとても慕っていた。四葉は何度も
「ごめん、今日は美来と約束してるんだ。」
「美来とお揃いのネックレス買った!学校でもつけるようにしてるんだ!!」
「私がネックレスつけてたら美来も毎日学校につけてきてくれた!!」
と話していた。
早速連絡アプリを開いて浅山美来を探す。
miku.A これか。アイコンは月とのツーショット。本当に好きなんだな。
〈浅山、ちょっと聞きたいことあるんだけど会える?〉
四葉、ごめん。俺は他の女の子と2人で会う約束をしてしまいました。でも四葉を死に追いやったものを知りたいから許してください。
20分くらいたっただろうか。ピコンと通知音が鳴った。
〈いいよ。6時に公園で〉
浅山も俺が何を聞きたいのか分かったのだろう。
5時50分。
早めに公園についたと思ったが浅山はもう待ち合わせ場所にいた。
「三河くん…その…聞きたいことって…?」
浅山の首元には綺麗に輝くネックレスがあった。
「浅山。」
浅山の顔が険しくなる。
「四葉の周りどうだった?四葉が自殺した原因みたいなやついなかった?」
冷たい沈黙がしばらく続く。浅山は少し考えたように下を向く。
「えっと。蒼くん…かな。強いて言うなら。私は関わりないし相手も知らないだろうけど。ちょっとイザコザあったみたいで。」
蒼くん。男?四葉の元カレか?
モヤモヤした気分になる。今度そいつにも会おう。
「じゃ!紫苑くん、また明日ね?」
彼女とは今年の春に付き合ってもう3ヶ月だ。
だけどこの、何もかも見透かしたような綺麗な瞳には慣れない。
少し目を離したら俺の手から消えてしまいそうで怖い。
そんな所も愛おしいが。
「はぁー…四葉が可愛すぎる。」
ため息のように口からこぼれた。その声が聞こえたのか彼女がニヤニヤしだす。
「へー?紫苑くんはそんなに四葉ちゃんが好きなんですねー?へー?」
聞かれたと思うと恥ずかしくなってそっぽを向いて応える。
「悪いかよ…」
これしか言えない。否定なんてもってのほかだ。彼女は本当に可愛い。全てが大好きだ。
「嬉しいっ!」
彼女の満面の笑みは愛おしい。綺麗で、触れたら壊れそうだ。
「そうだ!そんな紫苑くんにこれをあげるよ。」
彼女は俺の手をとって手のひらに小さなお守りを置いた。紺色の布地に歪な形で御守りと黄色の糸でかいてある。
手作りかな。
「何…これ、お守り?」
「そう!あ、でもこれね?“まだ”中身見ちゃダメだからね。私がいいよって言うまで。」彼女はそう言って満足気にスキップしながら自分の家がある方向に向かった。
可愛い。
彼女から物を貰うのは初めてだったら困惑する。
嬉しくて嬉しくてしばらく彼女の背を眺めていた。
その後我に返って彼女が行った方向とは逆の俺の家がある方向に向かって歩き出した。
何度彼女と家が隣だったらと想像したことか。
「ごめんね、愛してるよ紫苑くん。」
朝、学校への登校中。電車に揺られながらスマホを見ていたら彼女からメッセージが来た。
なんだこれ。ごめんねってなんだ。しかも急に愛してるよなんて。嬉しいけども!!
「どうしたの?」
「何かあった?」
そう送って少し心配だが連絡アプリを閉じて音楽アプリを開いてワイヤレスイヤホンに音楽を流す。
学校でどうしたのか聞こう。
学校に着くとまだ彼女は来てなかった。いつものように友達の圭が近くに来た。
「おい!何これー?こんなキーホルダー付けてなかったよな?まさか彼女からですかー?」
彼女から貰った御守りが嬉しすぎて通学バックに付けてしまった。
「そ。」
彼女に対する態度とは対称的に素っ気ない返事をする。
「はーー??ざけんな、リア充が。」
そう言い放った圭が俺の足を軽く蹴った。
圭はゲームで仲良くなった良い友達だ。
ガラガラガラと少し古いドアを開けて学年主任の先生が入ってきた。
いつもは担任なのに学年主任とは珍しい。
「皆さん、体育館に集まってください。」
何やら深刻そうな顔つきだった。
説教かな。朝からはさすがにダルい。
ダラダラと地下1階の体育館に集まるともう他のクラスは来ていた。うちで最後のようだ。
すると校長先生が出てきてマイクを手に取り深呼吸する。
校長が説教にわざわざ出てくることはないだろう。
なんだなんだと張り詰めた空気が流れる。
【月野四葉さんが亡くなりました。】
は?
校長は俯いて何かを堪えていた。
何も理解できない。頭が真っ白。死んだ?四葉が?なんで?
「今朝の8時10分頃、自分の部屋で首を吊っていたところを発見されたそうです。詳しいことは言えません。まだ警察の調査中です。」
ふざけんな。
ちらほらと泣く声が聞こえる。左前には四葉の親友、浅山美来が俯いて泣いていた。
俺は泣くことも出来なかった。
あまりにも衝撃だった。何も考えることが出来ない。
その後校長が四葉の家族などに詮索するなとか言っていたようだが上手く聞き取れなかった。
悲しいとは思いますが。
月野さんはいつでも素敵な人で。
受け入れ難い事実ですが。
なんだよそれ。
そんな綺麗事なんて要らねえよ。
だったら四葉を返して欲しい。
あまりにも早すぎる死だ。
受け入れたくない。
もう1回笑って欲しい。
あの瞳で見て欲しい。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。なんで四葉なんだ。おかしいだろ。
胸に重い重りが乗ったような感覚に陥った。そして頭の中に四葉の死への否定の言葉が流れ込んでくる。
それも、もうたくさん。
ちゃんと考えられるようになった時にはすでに俺は家にいた。四葉が死んだ。
なんでだよ。
「なんで自殺なんて…自殺…?」
確かに校長は四葉は自殺したと言った。なんの理由も無しに自殺するやつは到底いない。
それなら当然四葉にも首を吊った原因があるはずだ。もしそれが誰かのせいなのだとしたら?もし故意に四葉を追い込んだ人がいたら?まだ原因が人なのかすら分からない。けれど調べる価値はあるはずだ。
そうだ。親友に聞いてみよう。親友なら何か知っているかもしれない。親友の浅山美来は月をとても慕っていた。四葉は何度も
「ごめん、今日は美来と約束してるんだ。」
「美来とお揃いのネックレス買った!学校でもつけるようにしてるんだ!!」
「私がネックレスつけてたら美来も毎日学校につけてきてくれた!!」
と話していた。
早速連絡アプリを開いて浅山美来を探す。
miku.A これか。アイコンは月とのツーショット。本当に好きなんだな。
〈浅山、ちょっと聞きたいことあるんだけど会える?〉
四葉、ごめん。俺は他の女の子と2人で会う約束をしてしまいました。でも四葉を死に追いやったものを知りたいから許してください。
20分くらいたっただろうか。ピコンと通知音が鳴った。
〈いいよ。6時に公園で〉
浅山も俺が何を聞きたいのか分かったのだろう。
5時50分。
早めに公園についたと思ったが浅山はもう待ち合わせ場所にいた。
「三河くん…その…聞きたいことって…?」
浅山の首元には綺麗に輝くネックレスがあった。
「浅山。」
浅山の顔が険しくなる。
「四葉の周りどうだった?四葉が自殺した原因みたいなやついなかった?」
冷たい沈黙がしばらく続く。浅山は少し考えたように下を向く。
「えっと。蒼くん…かな。強いて言うなら。私は関わりないし相手も知らないだろうけど。ちょっとイザコザあったみたいで。」
蒼くん。男?四葉の元カレか?
モヤモヤした気分になる。今度そいつにも会おう。