頬に落ちた涙を拭って、真っ暗な公園を見渡した。
──妊娠したから、結婚するんだって。
だけど、もう少し早く知りたかった。年末に三ヶ月更新してしまったから、三月末まで仕事を辞められないのだ。つまり、あと二ヶ月くらい慶と過ごさなければいけない。私は耐えられるのだろうか。
なにはともあれ、終わったことを嘆いても仕方がない。私の目的は果たされたのだから、やっと全部が終わるのだから、それでいい。
これで慎ちゃんは幸せになれる──はずだったのに。
──今日、陽芽の誕生日だなーと思って。
どうして、私に連絡してきたの。
──陽芽のためなら今持ってるもん全部捨てられるよ。
──好きだよ、陽芽。
どうして、あんなこと言ったの。
私のしてきたことが、全て無駄になってしまうのに。
どうして私は、慎ちゃんがくれた言葉を嬉しいと思ってしまっているんだろう。
どうして、私は。
──他に行く場所、思いつかなくて。
いっそのこと消えてなくなりたいと思ったあの日、真っ先にモト君の家へ行ったんだろう。
モト君しか、思い浮かばなかったんだろう。
もう、自分がわからない。
大和との通話が終わってからも持ったままだったスマホの画面に指を滑らせた。
電話をかけても出なかった。もう深夜だし、寝ているだろうか。もしかしたら彼女といるかもしれない。
最後くらい、声を聞きたかったな。
だけど、これでいいのかもしれない。
声を聞いてしまえば、私はきっと言えなくなる。
慎ちゃんに、最後のメッセージを送った。
〈もう会うのはやめよう。美莉愛さんとお幸せにね。ばいばい、慎ちゃん〉