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「モト君、彼女できそうってほんと?」

 飲み会から一週間が経った今日もまた家出してきたのんちゃんは、ベッドではなく床に座っている。
 先日の件を少なからず反省してくれたのか、単に寒くなったからなのか、もう露出度の高い部屋着ではなくなっていた。

「えっ? なんで?」
「最近仲いい後輩の女の子いるみたいだって慶に聞いたけど」

 飲み会の件がばれたのかと思った。いや、ばれたところでどうってことはないのだが。ただなんとなく、他の奴らに──のんちゃんに知られたくなかっただけだ。

「べつに。相談されてただけだよ」
「その子、モト君に気あるんだね」
「そんなんじゃないって。彼氏の相談だったし」
「過去形だ。もう告白されて振っちゃった?」

 俺が答えられずにいると、のんちゃんはなぜか嬉しそうにふっと笑った。

「相談聞いてもらってるうちに好きになっちゃいました的な?」

 なんでわかるんだ。
 本当に女という生き物は恐ろしい。

「怖いんだけど」
「当たりだ」
「見てたの?」
「そんなの誰でもわかるよ。ありがちな話じゃん」

 そうなのか。
 相談を聞いているうちに告白される、という経験は初めてではなかった。だけどまさかありがちとまで言われるようなことだったとは。

「告られたけど、そんなの一瞬の気の迷いでしょ。ただちょっと弱ってるときにちょっと優しくされたからふらついただけで、結局彼氏のこと好きなんだよ」
「違うよ。最初からモト君に気があったんだよ」
「だから、そんなわけないって」
「意外と鈍感なんだね。モト君はそういうのわかる方だと思ってた」
「そういうのって?」
「相談を聞いてくれたから好きになるんじゃなくて、逆だよ。気があるから相談するの。なんとも思ってない男の人にいちいち相談なんかしないよ、女の子は」

 だったら自分はどうなんだ、と言ってやりたいところだが、やめた。べつに相談されているわけじゃない。
 何より、返答次第ではさすがの俺もダメージは免れない。