週末にさっそく飲み会が開かれた。といっても居酒屋で飲んでからカラオケに行くという、いつもの飲み会となんら変わり映えしない流れらしい。ただそこに知らない女の子が加わっただけだ。

「俺らは全員北大の工学部三年で、こちらが椿女子の一年生でーす!」

 本日の参加者八人全員が揃ったところで、幹事の須賀が順番に紹介をする。自己紹介などというくだりは死ぬほど苦手なので安堵しつつ、椿女子の一年という部分だけに内心過剰反応してしまった。

「椿女子の一年って、のんちゃんと一緒じゃん」

 俺の隣に座っている奴が言うと、女の子たちは首をひねった。

「友達の彼女が椿女子に通ってるんだ」

 平静を保ちつつ補足すると、女の子たちは「ああ」と納得した声を出した。

「のんってあだ名の子ならいるよね。学部は?」
「あれ? 誰かのんちゃんの学部知ってる?」

 須賀に問われ、「文学部」と答える。

「あ、同じだ。うちら全員文学部だよ。名前は?」
「そういえば、のんちゃんってなんて名前なの? のぞみ? ののか?」

 俺は知っていたが、なんとなくみんなにならって首を傾げておいた。

「え、何それ。まあ顔見ればわかるかも。あたし人の顔覚えるのけっこう得意だし」
「俺持ってる。花火大会の日に隠し撮りしたから」

 須賀の発言に、反射的に「は?」と返してしまった。俺でさえのんちゃんの写真など持っていないのに──と思ってしまった俺は、自分で思っているよりも重症なのかもしれない。

 俺の「は?」に気づかなかったらしい須賀が写真を見せると、女の子たちは画面をじっと見つめた。

「あ、可愛い。んーでも見覚えないなあ」
「ゼミとか違ったら全然わかんないよね」
「そっか。まあいいや。とりあえず飲もうぜー!」

 のんちゃんの話題が去ったことになんとなくほっとしながら、さほど楽しくもない会に溶け込んでいるふりを続けた。