そんな日々に終わりを告げたのは──カウントダウンが始まったのは、付き合って九ヶ月が過ぎた、陽芽の十六歳の誕生日。

 この頃の陽芽はあまり家に帰りたがらなかった。お母さんが彼氏とその息子を私に会わせたがっていると言って、逃げ回るように頻繁に札幌へ来たり地元の友達と夜遅くまで出歩いていた。どうやら結婚したいみたいだ、と。

 お母さんだって人間だし女なのだから、勝手に恋愛する分には構わない。だけど生まれてこの方母子家庭で一人っ子だったのに、今さら急にお父さんときょうだいができても困るとふてくされていた。
 高校を卒業したら家を出るつもりではあるが、あと二年以上もある。その間、赤の他人だった男たちと一つ屋根の下でどう接しろというのか、と。

 気持ちはわからなくもない。おれの父さんにも彼女がいて、まだ会ったことはないが近々再婚するつもりだと聞いている。
 もちろん構わないし祝福もするが、赤の他人だった女性と突然家族になっても打ち解けられる自信はなかった。

 幸いおれは実家に住んでいないし、再婚したところで顔を合わせる機会もそんなにない。他にやりたいこともないので将来的には父親の会社を継ぐつもりだが、大学卒業後はとりあえず札幌で同業の会社に就職するつもりだし、いずれ地元へ帰る日が来ても実家には戻らない。
 もしもおれが高校生で、同居以外の選択肢がなかったら。
 想像してみると、確かに複雑だなと思った。

 帰りたくないと夜遅くまで駄々をこねる陽芽の腕を引きながら、初めて家の前まで送った。陽芽はおれと母親を会わせたくないと言って、いつも近所のコンビニで別れていたが、時間も時間なので一人で帰すのは心配だった。

 母親はずっと外の様子を窺っていたのだろう、家の前に着くとすぐに玄関のドアが開いた。目が合って、思わず背筋を伸ばす。