のんちゃんと話していると、妙な違和感を覚えるときがある。あと、いつからなのかはっきりと覚えていないが、慶とのんちゃんがどうにも噛み合っていない気がしてならないのだ。
「あのさ、つぐみ。……のんちゃんって女子に嫌われるタイプ?」
訊いたのは、あの日のんちゃんが言った台詞を思い出したからだった。
──大学の友達なんかいないよ。
そういえば、あの台詞にも少し違和感があった。
つぐみとのんちゃんは何度か会っているし、男だらけの中で唯一の女同士ということもあってか親しそうに話している。いくら男勝りとはいえ、つぐみも生物学上は一応女の子だ。参考程度にはなるだろう。
「なんで? そんなことないと思うけど。可愛いし、普通にいい子じゃん。……え、べつにわたし、のんちゃんに裏ありそうとか悪口言いたいわけじゃないからね」
「そうじゃなくて……なんとなく」
「けど、考えてみたらほぼ毎日慶といるよな。のんさん友達いないの?」
つぐみは届いたレモンサワーのグラスをすぐさま持ったが、口をつける前に手を止めた。
「友達がいないっていうか、人と深く関わる気がないって感じしない? 必要以上に踏み込んじゃいけない雰囲気があるっていうか。なんとなくわたしたちに分厚い壁をつくってるように感じる。これも勘だけど」
まるで根拠がない話にもなぜかなんとなく説得力があるのは、女の勘は侮れないと学習しているからだろうか。
「……そう? 人懐っこくない?」
なあ、と言いながら由井と顔を見合わせると、つぐみは途端に無表情になり、冷ややかな目で俺たちを見据えた。
「ジェンダーレスの時代にこんなこと言ったら、差別的発言だって非難されそうだけど」
レモンサワーをぐびぐびと飲み、嘲るように鼻を鳴らしてグラスを置く。
「男ってほんと鈍感だよね」
言い返せない俺と由井は、あさっての方向を見た。