夏休み終盤となった九月中旬。由井に電話で呼び出され(正しくはつぐみだが)、俺たち三人は麻生駅前の居酒屋で飲んでいた。
 夜が更けてつぐみの酔いもだいぶ回ってきたところで、一足先にお暇しようと目論んでいたとき。

「そういえば、のんちゃんとどうなったの?」

 もう何杯目かわからないレモンサワーを飲み干したつぐみに問われ、あの日のことを思い返した。

 ──私はね、慶を監視するために来たの。

 のんちゃんはそれ以上何も言わなかった。俺も訊かなかった。その件についてはあまり関わりたくないというのが本音だったからだ。
 慶が浮気をしているか否かは知らないし、知りたいとも思わない。何より監視するために札幌まで出てくる執念には恐怖すら感じる。

 二時間が過ぎても帰ろうとしないのんちゃんに痺れを切らし、俺が慶に連絡して迎えに来てもらった。
 リビングに座ったままだったのんちゃんは、決して慶の顔を見まいとするように俯いていた。慶も慶で、のんちゃんが立ち上がったことを確認すると、声をかけることもなく俺の家をあとにした。

 去っていく二人の後ろ姿を見て、思った。
 まじでなんだんだこのカップルは、と。

 回想を終えれば、つぐみはにやにやしながら俺をじっと見ていた。

「どうもなってないから」
「ほんとに? ヤッちゃったんじゃないの?」
「ヤッてねえよ。馬鹿か」
「なんだあ。つまんない。間近でドロドロの三角関係見れるかもって期待してたのに」

 呆れながら由井を見れば、今日もまたつぐみの隣でけらけらと笑っていた。なぜ俺の周りにいるカップルは変な奴らばかりなのか。