モニターを確認すると、昨日会ったばかりの由井とつぐみが立っていた。
 なんとなくほっとして、そのまま玄関へ向かいドアを開ける。

「やっほーモト」

 そこらへんで飲んでいたのか、つぐみの顔は赤かった。後ろに立っている由井は下戸なので飲んでいないだろう、普段と変わりない。今日も酒豪のつぐみに付き合わされていたようだ。

「まさかうちで二次会する気?」
「違います。三次会です」

 つぐみが言うと、由井がコンビニの袋を掲げた。おまえはつぐみの黒子か。
 深夜の突撃訪問はろくなことがない。いつもならげんなりするところだが、今日はぜひともうちに入って大いに盛り上がってほしい。
 が、俺が侵入を許可するよりもわずかに早く、

「あれ? のんちゃん来てるの?」

 つぐみがのんちゃんの靴に気づいた。次いで慶の靴がないことにも気づいたらしく、由井とつぐみは目を丸くして顔を見合わせた。

「いや違うから。いろいろあってちょっと保護してるだけだから。来てくれてよかったよ。さっさと上がって」
「いや、うちらやっぱり帰る。お邪魔だし」
「は?」
「おいモト」
「はい?」

 つぐみは俺の胸ぐらをつかみ、ぐっと顔を近づけた。

「避妊は絶対しろよ?」

 この女をなんとかしろと目で訴えれば、由井はけらけら笑っていた。
 基本的に無表情の由井は、つぐみといるときに限りよく笑う。ただし笑いのツボが完全にずれているのでよくわからない。というか、はっきり言ってこんな下品な女のどこがいいのか全然わからない。

「手ぇ出すなよ、とかだろ。普通は」
「言ったところで出しちゃうかなと思って」
「出さねえよ」
「あっそ。じゃあね~」

 ひらひらと手を振って去っていくつぐみと黒子由井をげんなりした心地で見送り、部屋に戻った。

「由井さんとつぐみさん?」
「そう。なんか帰っちゃったけど」

 どうでもいいときは強行突破してくるくせに、肝心なときに役に立たない。
 つぐみのせいでなんとなくさっきよりも意識してしまう今の状況に胸中で頭を抱えながら、ひとまずパソコンとの睨み合いを再開した。