すぐに美莉愛は父親が用意した男と付き合い始めた。想像を絶するほどショックだったけど、今後は友達として美莉愛を支える。美莉愛を守る。そう自分に誓った。

 それからも美莉愛は度々オレに連絡をしてきたり、気まぐれに突然麻生まで訪ねてきたりするようになった。
 ただ話を聞いてやるだけ。後ろめたいことは何一つしていない。オレたちは友達だ。だから、たとえ元カノだろうとのんにとやかく言われる筋合いはない。

「彼氏とは仲直りできた?」
『ううん。……なんかもう、だめなのかも。最近ほんと冷たくて。嫌われちゃったのかなあ』
「大丈夫だよ。美莉愛のこと嫌いになる男なんか絶対いないって」
『ありがとう、慶。……ごめんね。慶だって今はもう彼女がいるのに、いつまでも慶に頼ってちゃだめだってわかってるんだけど』
「オレのことは気にしなくていいから。けど……」

 電話口で美莉愛が泣いているのがわかった。
 友達でいることを決意した日の涙を思い出し、鼻の奥がつんと痛む。
 車の天井を見上げて、大きく息を吸った。

「いい加減、幸せになってよ。──じゃないと、いつまでも美莉愛のこと忘れられない」