我ながら、とても順風満帆な人生だったと思う。
裕福な家に生まれ、優しい両親に大切に育てられ、特に母さんには溺愛された。
理由はよくわかっている。三兄弟の次男として生まれたオレは、中でも一番出来がよかったからだ。
二歳上の兄貴は外で遊ぶのが大好きな自由人、二歳下の弟は典型的な末っ子気質で我儘なうえやんちゃ。自然と両親の期待はオレに向けられるようになり、オレもそれに応えてきた。
といっても、血の滲むような努力をしてきたってわけじゃない。
昔から勉強もスポーツも人並み以上にできた。中学では三年間首位をキープし、近辺で一番の進学校にトップで合格し、よほど手を抜かない限り上位三位以内には入っていた。そして道内一の偏差値を誇る国立大にも余裕で合格した。
兄貴と弟はスポーツこそ得意だけど勉強ができる方ではなかったから、両親はいつもオレを褒めてくれた。怒られた記憶はないし、オレも反抗したことはない。
プレッシャーを感じたことはなかった。きょうだいにやっかまれることもなかった。それどころか『慶のおかげで自分たちは自由にできる』と感謝すらされていた。
家族が、特に母さんが喜んでくれることが嬉しかった。
そして同じくらい、称賛されるのは気持ちよかった。