──モトは結局、あたしのことなんか好きじゃないんだよ。
数少ない元カノたちは、付き合って数ヶ月も経てばみんな口を揃えてそう言った。
要求をできるだけ聞き入れる俺を最初は優しいと言い、次第にこちらからの要求が一切ないことに疑問を抱き始めるのだ。
──モトも、何かあったら言ってね。
そう言ってくれる子もいたが、特にないと答えた。
喧嘩をしたこともない。どんなに相手が怒っていても俺が怒ることはない。
そんな俺を冷たいと言うようになり、最終的に例の台詞に着地する。
元カノたちを責めるつもりはさらさらない。仕方がないことだと思っている。自ら会いたいなどと言うことはなかったし、束縛なんか一切しない。別れを切り出されて引き留めたことすら一度もなかった。
と、中学高校でそんな経験を繰り返し、もう痛いほどわかっていた。俺はまったくもって恋愛に向いていないのだと。だから大学一年の夏に振られて以降、恋愛から遠ざかる一方だった。
「あれ椿女子じゃね?」
北18条駅で停車すると、華やかな女の子たちがぞろぞろと乗り込んできた。ここは椿女子の最寄り駅だし、そうでなくとも女子大に通っている女の子は独特の雰囲気があるのでなんとなくわかる。
「ほんとだ。そういえば、朝のんちゃんと一緒に行ったりしないの? それか帰りに待ち合わせするとか」
のんちゃんは意外と(と言ったら怒られそうだが)真面目らしく、毎日朝から夕方まで講義を詰め込んでいるようだった。余裕がある慶とは朝も帰りもあまり時間は合わない。
とはいえ朝一から講義の日ももちろんある。だけど慶はいつも俺や由井と一緒で、そこにのんちゃんが加わったことは一度もなかった。考えてみれば、こうして地下鉄で見かけたこともない。
「朝は早めに行きたいからっつって、さっさと家出るんだよ。帰りも、待たせちゃうからいいって」
不満そうに言う慶を見て、思わず噴き出しそうになってしまった。