のんちゃんが越してきて三ヶ月。六月も終わりに近づいているが、北海道は梅雨と無縁なので湿気に悩まされることもなく、ただただ涼しくて過ごしやすい季節だ。
夕方に講義を終え、慶と由井と共に大学を出て札幌市営地下鉄南北線北12条駅へ向かう。
そこから十六分揺られたのちにたどり着く麻生が、俺や慶たち、そして由井の彼女のアパートがある場所だ(実家暮らしの由井は彼女の家に入り浸っている)。
地元から越してくる際にあえて大学から離れている麻生を選んだのは、いくつか理由がある。学生寮はなんとなく嫌だったのと、家賃が安かったのと、大学近辺に住むと学生が多く騒がしそうだったからだ。ちなみに慶も同じような理由らしい。
入学したばかりの頃は慣れない地下鉄通学がかなり苦痛だったが、一、二年の頃にこつこつ単位を取得してきたので、それほど講義に追われていない今は通勤・通学ラッシュの時間帯にぶつかることも少なくなっていた。
「モト、今日も行くよな?」
主語がなくともパチンコ屋のことを言っているのはわかっている。
「行こうかな。暇だし。由井は?」
「行かない。つぐみがバイト休みになったらしいから」
つぐみとは由井の彼女だ。同い年だが違う大学に通っていて、大学一年の夏にバイト先で知り合ったらしい。
俺も頻繁に会っているので友達と呼べるほどの仲になったが、サバサバを通り越して男勝りなので付き合いやすい奴である。
「つぐみも連れてくれば? 前はたまに来てたじゃん」
「飽きたからもう行かないって」
「なるほど」
黙っている慶を見れば、ほっとした顔であさっての方向を見ていた。
由井がスマホゲームを開始したので、話を慶に戻す。
「のんちゃんも来るの?」
「来るよ。講義終わったらいつもの店来いって連絡しといたから」
慶は今でも必ずと言っていいほどのんちゃんを連れてくる。だけど数時間後には休憩所でふてくされているのんちゃんを見かけていた。