〈もう会うのはやめよう。美莉愛さんとお幸せにね。ばいばい、慎ちゃん〉

 なぜ、このタイミングで。
 陽芽からそのメッセージが来たとき、真っ先にそう思った。

 ──妊娠したの。結婚してくれるよね?

 二週間前、美莉愛にそう報告を受けたとき、目の前が真っ暗になった。
 わかっていた。美莉愛には他に男がいることも、美莉愛がおれを好きなわけではないことも。ただそこそこ裕福な家柄と、いずれ経営者になるという将来性が目当てだっただけだ。

 責めるつもりはない。おれだって美莉愛のことが好きで付き合っていたわけじゃない。
 三年も別れなかったのは、おれと美莉愛の父親が古くからの友人であることと仕事上の取引先でもあることが引っかかっていたからだ。

 美莉愛はおれに執着している。だから、別れ話を切り出せば確実に機嫌を損ねる。逆上した箱入りのお嬢様は何をするかわかったもんじゃない。美莉愛の父親だって、迷わず友人よりも溺愛している一人娘をとるだろう。

 ただそれだけだった。
 だから子どもができたと言われても、嬉しいと思えなかった。
 こんな気持ちのまま、結婚なんかできるはずがなかった。