後日、慎ちゃんに会って話したいと連絡をした。別れてから一度も連絡を取っていなかったけれど、返ってくる自信があった。全てお母さんから聞いたとも送ったからだ。

 予想通り慎ちゃんは返信をくれて、大通公園で会った。
 地元では会えない。万が一お母さんに知られたら面倒だ。

「きょうだい……になっちゃったんだね。私たち」

 きょうだいだった、じゃない。私たちはきょうだいになってしまったのだ。
 少なくとも私の中ではそうだった。だって、お互いの存在を知らずに十数年も赤の他人として生きてきたのに、ある日突然『あなたたちはきょうだいだ』と告げられたのだから。そんなの大和と変わりない。

 慎ちゃんが知ったのは、街中で偶然私のお母さんに会ったときに聞いたそうだった。
 のんと別れてほしい、といきなり言われたという。私と同じように理由を問い詰めると、私が聞いたのと同じ説明を受けた。

 お母さんは、このことを私と彼──慎ちゃんのお父さん──には言わないでほしいと懇願したそうだ。慎ちゃんのお父さんは、かつての不倫相手が妊娠したことを、そして私が産まれたことを知らないのだと。

 夫の不倫に気づいた慎ちゃんのお母さんが、夫には告げず私のお母さんに直接連絡して会った。そのときに妊娠を告げ、断固として産むと主張するお母さんに、交換条件として『夫には絶対に言わない』と約束させた。

 急にそんな話を聞かされても、もちろん信じられるはずがなかった。だから慎ちゃんは、最後の頼みの網として、数年ぶりに実のお母さんに連絡して会った。どうか何かの間違いであってほしいと思った。だけどお母さんは、私の名前を言うと絶句して顔を真っ青にしたそうだ。

 百万歩譲っても足りないけれど、慎ちゃんのお父さんに言わないでと頼み込んだのはまだわからなくもない。
 だけど私にも秘密にするよう言ったのは、お母さんの保身に他ならないだろう。私に責められるのが嫌だったとしか思えない。この期に及んで、お母さんは結局自分が一番可愛かったのだ。

 そこまでして私を産んでくれてありがとう、なんて嘘でも思えなかった。私の存在のせいで、大好きな人の家庭をぶち壊してしまったのだから。

 慎ちゃんの両親が離婚したのは、私とお母さんのせいだった。不倫相手との関係を絶たせても、相手には夫の子供がいるという事実に耐えきれず離婚したらしい。慎ちゃんのお父さんには真実を告げないまま。