由井とつぐみ、そしてもちろん慶にも、のんちゃんが見つかったと連絡した。
電話の向こうで慶は黙り込んでいた。一旦うちで預かると伝えると、予想通り『わかった』としか言わなかった。すぐに電話を切った慶に、初めてなんだか虚しくなった。
氷みたいに冷たくなったのんちゃんをベッドに寝かせて毛布と布団でくるみ、ストーブの温度を上げた。よく凍死せずにいてくれたものだ。
俺はソファーに座り、手を繋いだまま、静かに話していた。
「賭けは勝ったの?」
「うーん……わかんない」
「何それ」
「だってどっちにも賭けてなかったもん」
「賭けになってないじゃん」
そうだねと小さく笑って、こっちを向いた。
体は温まってきただろうが、それでも目は虚ろなままだ。
「でも決めてた」
「何を?」
「慶が来たらどうするか、モト君が来たらどうするか」
「慶が来たら?」
「ちゃんと話し合って、……もし万が一、慶が謝ってくれたら……私が今までしてきたこと全部話して、私もちゃんと謝ろうと思ってた」
「俺が来たら?」
のんちゃんは答えなかった。
そのとき、なんとなく察してしまった。
のんちゃんはもうすぐ、俺の前からいなくなるのだろう、と。
そして、いつか彼女に出題された問題の答えも。
「俺、答えわかったよ」
「なんの?」
「絶対に赦されない恋」
俺が気づいたわけではない。俺がその答えにたどり着くよう、のんちゃんに導かれていたのだろう。もしかするとのんちゃんはずっと誰かに打ち明けたくて、その相手に俺を選んだのかもしれない。
浮気や二股や不倫以上の罪。絶対に、繋がってはいけない相手。慶の知らない兄の存在。
この想像があまりにも突飛しているという自覚はあった。
だけど、他に思い浮かばなかった。
「血の繋がったきょうだい、だよね」
虚ろな目のまま、口角を上げた。
「さすがだね、モト君」