通話を切って、電源も落とした。
涙を拭うこともせずに、凪紗と目を合わせる。
「……はは。結局ぼろぼろ泣いちゃった」
「うん。お疲れさま」
「やっぱり、電話で終わらせるなんて最低だったかな」
「最低じゃないよ」
「幸せじゃなかったなんて……ちょっと冷たすぎたかな」
「中途半端に終わらせるよりずっといいよ。かっこよかったよ、夏帆」
「こんなぼろぼろ泣いて、めちゃくちゃかっこ悪いよ」
「ううん。かっこよかったよ、すごく」
凪紗の唇が震えている。頭をそっと撫でられた瞬間、落ち着きかけていた涙がまた溢れた。
堤防に座ったまま、朝日が昇るまでふたりで泣き続けた。
どれだけ泣いてもすっきりなんてしない。今はただ、つらくて苦しい。虚無感に蝕まれて、心が痛くて、傷口をえぐられているみたいに痛くてどうしようもない。本当にこれでよかったのかもわからない。
だけど、光が射した空の下で泣き腫らした顔を見合わせたとき、私たちはきっと大丈夫だと思えた。だって私たちは、大好きな人に自分から〝さよなら〟を言えた。ちゃんと自分の足で一歩踏み出すことができた。
しばらくは引きずるだろう。もしかしたら、今よりももっと、想像を絶するほどつらい瞬間が訪れるかもしれない。立ち止まって、後ろを振り返って、後悔の念に苛まれる瞬間が訪れるかもしれない。
そんなときは、こうしてまた泣いてもいいだろうか?
何度か泣いて、もしかすると何度も泣いて、全部──いや、せめて半分くらい洗い流すことができたら。
また、思いきり笑えたらいい。
笑い話にできるくらい、乗り越えられたらいい。
いつかまた、心から誰かを好きになれたらいい。
そして今度こそ、幸せだと胸を張って言えますように。