待ち合わせ場所はさくらの家の近所にある公園だった。さくらは白い息を吐き出しながらコートに身を包んで駆け足で大輔が待つという公園に向かう。
「お待たせ!」
 さくらが息を切らしながら公園に辿(たど)()くと、大輔が笑顔で迎えてくれた。
「そんなに急がなくても大丈夫だったのに」
 大輔はそう言いながらもいつもの笑顔だ。さくらはそんな大輔の笑顔が大好きだった。
 さくらが一息ついた頃合いを見計らって、大輔が楽しそうに口を開いた。
「あのさ、さくら……。俺、就職先、決まった!」
「ホントっ?」
 それはさくらにとっても(うれ)しい報告だった。ずっと面接で落ちて苦しんでいる大輔を隣で見てきたさくらも、その報告を受けて思わず笑顔になる。
「どんなところっ?」
「実はさ、バイト先の親方が、まだ就職決まってないようならウチで働くか? って言ってくれてさ!」
 大輔はその言葉に二つ返事で乗ったのだ。
「良かったぁ~……」
 さくらもホッと胸をなで下ろす。
 さくらの安心した様子に大輔も笑顔だ。
「でさ、さくら……」
 大輔はまだ何かを言いたいようで、さくらの目をまっすぐに見据えて言葉を続けた。