だが、俺としてはそれでは困る。
クロレルには有能であって、俺の変わりに次期領主として立派に務めてもらわなくてはいけないのだから。
俺は、自分の自由気ままで幸せな未来に投資をする意味も持って、それら全てにてこ入れをしていった。
まず取り組んだのは、家臣たちの入れ替えだ。
クロレルは自分に反対するものはすべて解雇して、周りを「はい」としか言わない従順な人間たちで固めていた。
それを一新したのだ。
「クロレル様、街の経済活性化の案ですが、明らかに税のかけすぎで生活苦が起こっております。ここは一つ、税の引き下げを行うのはいかがでしょうか」
「うん、それがいいかもしれないな。それと、子供が生まれた家庭には給付金を出そう」
「して、財源のほどは?」
「屋敷にある無駄な家具を売るといいさ。それと、亜人排除計画は今すぐ中止にしてくれ。人件費をかけるだけ無駄だ」
経済、福祉、防衛と、その分野に精通している人間を公民問わずに集めた。
なぜ先に人から替えたかと言えば、俺とクロレルの入れ替わりがいつ解けても、サポートする家臣たちが有能なら政治は崩壊しないと踏んだためだ。
こうして俺は次々と、クロレルの発案した無能きわまりない政策の変更を断行した。
元がひどすぎたこともあろう。
その成果は短期間でも、みるみるうちに上がった。