そしてメリリが加わった効果は、なにも食に限ったことではなかった。
ハウスメイドだった彼女は掃除や洗濯にもたけており、あらゆる面で俺とセレーナにないものを持っていた。
せっかくの技術である。俺たちだけで独占していても、もったいない。
そこでメリリには空いた時間は、村で家事を担ってくれている方々へ指導をお願いすることとした。
「あ、違いますよ。服についた汚れはこすったらダメです。叩きましょう、とんとんと!」
「えっと、メリリさん。もう一度お願いします」
「だから、とんとんです」
……だいぶ感覚的な気もするが、少なくとも和気あいあいとして雰囲気はいい。
彼女の明るい声に導かれるようにして、村全体が活気づいているようにも感じた。
集会所を覗けば、セレーナは今日も鑑定にいそしんでいる。
最近では、たとえば農具などの簡単に作れるものの製造も始めたため、こちらの活気も上々だ。
そんな中、俺が一人向かったのは村の外れにある雑木林だ。
やりたいことは決まっていたし、場所も前々から見繕ってきた。
俺はまずその中へと入り、一部の場所に魔力伝導機能のある杭を打つ。これは、そこへ魔力を流せば、他の杭も反応して結界を作れる代物だ。
この間、クロレルシティで仕入れてきていた。
「全てをさらう風よ、無に帰せ。滅風旋回!」
準備が整ったのち、俺は風属性魔法を発動する。
しばらくすると、杭で囲んだ範囲にのみ強い風が発生する。
やはり、だんだんと魔力量が増えている気がする。少し前まではここまでの威力は出せなかった。
もしかするとメリリがきたことで、栄養バランスの整った食事をとれていることもあるのかもしれない。
強い風に耐えながらも、俺は魔力を流し続ける。
一定時間ののちに確認すれば、そこは更地と化していた。脇を見れば、切った木々が積み重なっている。
「……おっと」
木々を無駄にしないための技の調整といい、範囲の広さといい、さすがに負荷が高かったらしい。俺はふらっとしかけるが、倒れこんでは行かない。
またセレーナが支えてくれていたのだ。
……というか、見れば村人が何人も見に来ている。かなりの轟音だったから、なにが起きたのか気になったのだろう。
セレーナは、抱え込むようにしていた俺の頭を軽くはたく。
「また無茶したわね、やりすぎよ」
「悪い。飯もよく食べたから、ちょっとはりきりすぎたな」
「……で。これ、まさか農地を増やすために?」
「さすがだな、セレーナは。だから前に、土の質を鑑定してもらったんだ。土砂が崩れないかの確認もお願いしただろ?」
だいぶ生活環境がましになってきたとはいえ、農地が整備されない限り、食料の供給が安定することはない。
そのためには農地を増やす必要があるが、山の中にぽつんとあるこの村では土地が足りない。
その時、目をつけたのがこの場所であった。
森の開発は、場合によっては洪水の原因になったりもする。無限に開発するわけにはいかないが、ある程度はよかろう。
「あとはここを耕してくれる人さえいれば、完璧なんだけどなぁ。全部俺がやるとか、まじで勘弁してほしいし。正直こんな大技毎日はできないぞ、というか無理。そんなの絶対嫌だ」
「そうね、よくないわね」
村人たちが、突然に増えた村の敷地に唖然としている中、俺とセレーナはここ数日で何度も考えてきた問いを再考する。
「ぼ、ぼっちゃま~~!!」
そこへ、メリリも遅れてやってきた。
小さな体と大きな胸をたゆませながら、息を切らして走ってくる。心配してくれたのかと思えば、彼女はこちらに掛けつけるなり、俺の頭をセレーナの方から自分の方へ、しかも胸へと引き寄せる。
俺を掻き抱いて言うには……
「ぼっちゃま、あたしの胸でよく休んでください♡ こっちのがずーっと柔らかいですよ」
というもの。
やっぱり、明らかにずれすぎだ。そして、村人の手前だったからかなり恥ずかしいったらなかった。顔に血が上ってくる。
「……あなた。そういう問題じゃないと思うのだけど?」
「そういう問題です。ぼっちゃまは、ここで大きくなられたんですから。ここで休むのが一番です♡」
いや、なってないよ? しかも、捉えようによってはよくない誤解を招く言い方だ。
あと、もうそれ以上は本当に恥ずかしいからやめてくれない!?
こうなったらば、しょうがない。
秘技として、俺はメリリの胸にあえて顔を強く押し付ける。
「あっ、ぼっちゃまったら♡」
そうして力強くホールドされていた腕と胸に隙間を作ったのち、下をくぐるようにして、どうにか逃れたのだった。
ハウスメイドだった彼女は掃除や洗濯にもたけており、あらゆる面で俺とセレーナにないものを持っていた。
せっかくの技術である。俺たちだけで独占していても、もったいない。
そこでメリリには空いた時間は、村で家事を担ってくれている方々へ指導をお願いすることとした。
「あ、違いますよ。服についた汚れはこすったらダメです。叩きましょう、とんとんと!」
「えっと、メリリさん。もう一度お願いします」
「だから、とんとんです」
……だいぶ感覚的な気もするが、少なくとも和気あいあいとして雰囲気はいい。
彼女の明るい声に導かれるようにして、村全体が活気づいているようにも感じた。
集会所を覗けば、セレーナは今日も鑑定にいそしんでいる。
最近では、たとえば農具などの簡単に作れるものの製造も始めたため、こちらの活気も上々だ。
そんな中、俺が一人向かったのは村の外れにある雑木林だ。
やりたいことは決まっていたし、場所も前々から見繕ってきた。
俺はまずその中へと入り、一部の場所に魔力伝導機能のある杭を打つ。これは、そこへ魔力を流せば、他の杭も反応して結界を作れる代物だ。
この間、クロレルシティで仕入れてきていた。
「全てをさらう風よ、無に帰せ。滅風旋回!」
準備が整ったのち、俺は風属性魔法を発動する。
しばらくすると、杭で囲んだ範囲にのみ強い風が発生する。
やはり、だんだんと魔力量が増えている気がする。少し前まではここまでの威力は出せなかった。
もしかするとメリリがきたことで、栄養バランスの整った食事をとれていることもあるのかもしれない。
強い風に耐えながらも、俺は魔力を流し続ける。
一定時間ののちに確認すれば、そこは更地と化していた。脇を見れば、切った木々が積み重なっている。
「……おっと」
木々を無駄にしないための技の調整といい、範囲の広さといい、さすがに負荷が高かったらしい。俺はふらっとしかけるが、倒れこんでは行かない。
またセレーナが支えてくれていたのだ。
……というか、見れば村人が何人も見に来ている。かなりの轟音だったから、なにが起きたのか気になったのだろう。
セレーナは、抱え込むようにしていた俺の頭を軽くはたく。
「また無茶したわね、やりすぎよ」
「悪い。飯もよく食べたから、ちょっとはりきりすぎたな」
「……で。これ、まさか農地を増やすために?」
「さすがだな、セレーナは。だから前に、土の質を鑑定してもらったんだ。土砂が崩れないかの確認もお願いしただろ?」
だいぶ生活環境がましになってきたとはいえ、農地が整備されない限り、食料の供給が安定することはない。
そのためには農地を増やす必要があるが、山の中にぽつんとあるこの村では土地が足りない。
その時、目をつけたのがこの場所であった。
森の開発は、場合によっては洪水の原因になったりもする。無限に開発するわけにはいかないが、ある程度はよかろう。
「あとはここを耕してくれる人さえいれば、完璧なんだけどなぁ。全部俺がやるとか、まじで勘弁してほしいし。正直こんな大技毎日はできないぞ、というか無理。そんなの絶対嫌だ」
「そうね、よくないわね」
村人たちが、突然に増えた村の敷地に唖然としている中、俺とセレーナはここ数日で何度も考えてきた問いを再考する。
「ぼ、ぼっちゃま~~!!」
そこへ、メリリも遅れてやってきた。
小さな体と大きな胸をたゆませながら、息を切らして走ってくる。心配してくれたのかと思えば、彼女はこちらに掛けつけるなり、俺の頭をセレーナの方から自分の方へ、しかも胸へと引き寄せる。
俺を掻き抱いて言うには……
「ぼっちゃま、あたしの胸でよく休んでください♡ こっちのがずーっと柔らかいですよ」
というもの。
やっぱり、明らかにずれすぎだ。そして、村人の手前だったからかなり恥ずかしいったらなかった。顔に血が上ってくる。
「……あなた。そういう問題じゃないと思うのだけど?」
「そういう問題です。ぼっちゃまは、ここで大きくなられたんですから。ここで休むのが一番です♡」
いや、なってないよ? しかも、捉えようによってはよくない誤解を招く言い方だ。
あと、もうそれ以上は本当に恥ずかしいからやめてくれない!?
こうなったらば、しょうがない。
秘技として、俺はメリリの胸にあえて顔を強く押し付ける。
「あっ、ぼっちゃまったら♡」
そうして力強くホールドされていた腕と胸に隙間を作ったのち、下をくぐるようにして、どうにか逃れたのだった。