魔法適性がない――――。

そう審判を下されたのは、今から半年前。クロレルとの入れ替わりの少し前、18歳になった時のことだ。
この歳になれば、適性を持つ者には魔法紋章が発現する。

しかし、神官による魔力付与式を受けても、俺にその紋章は浮かんでこなかった。

「……魔力はお持ちのようなのですが、それを出力できないなんて。神に見放されているようですね、アルバ様は」

そして、深刻な顔でこう告げられたときには、父は落胆し、親族の中には悲嘆にくれて延々と涙を流すものもいた。

しかし、俺にとってはそんな形だけの紋章などはどうでもよかった。
……正直、手首に紋章ってださくね? くらいのもの。

なぜかと言えば、俺は15の頃からすでに魔法が使えていたからだ。
何度も魔法を見ているうちに、なんとなく発生原理を理解できるようになり少し練習をしたら、あら不思議。

割とあっさり、使えるようになっていた。
ただし、こればかりは独自の感覚による面が大きいらしい。

俺とクロレルが入れ替わっていた間も、あの馬鹿兄は俺がまさか種々の魔法を使えるなどとは気づかなかったようだが。

それがおかしな現象であることは当然分かっていた。

普通は一つの属性しか使えないし、そもそも18歳にならないと使えないのだ。
過去の文献を漁ってもさってもみたが、いまだかつてそんな魔法使いはいないらしい。

唯一似ているのは、神話に出てくる【万能魔法】なる能力だけ。

そんなことを馬鹿正直に申告すれば、珍人間として扱われ、貴族どものおもちゃにされる可能性が高いことは分かり切っていた。

だから俺は、それをひた隠しにすることとした。

なぜなら俺の夢は、日がな寝て暮らす超幸せ完璧スローライフ!!
魔法能力で評価され王城に呼ばれて昇進……、みたいな。いわゆるエリート進路は勘弁だったのだ。

そのためなら、たとえ無能と罵られようが関係ない。
無能でいいから、自由を手にしたかった。