「ディーネ! 水を!」
「まかせるでち!」
アイアン・ドラゴンが尻尾でノエルの土の塊を攻撃したところで、ディーネが再び滝のような水を出す。
大量の水で視界を奪っている隙に、シルフィの力でメルと俺がアイアン・ドラゴンの後ろにある通路へ。
「お兄ちゃん! あった!」
「やっぱり! すぐやるから、合図したらお願い!」
メルが指さした先、アイアン・ドラゴンのすぐ後ろの通路に目をやると、
≪もしも、人間の魔力が触れた場合、鉄の板を出し、ドラゴンの右脚を……この魔法陣の名前を「守護獣」とする≫
今まで見たことがないような、ものすごく長い魔法陣があり、鉄でドラゴンを作り出すという記述と、そのドラゴンが攻撃を行う条件などが事細かく書かれている。
まさに俺が日本で作っていたようなプログラムの塊で、時間をかければ解析して同じものを作りだすことも出来るのだろうが……今はそんなことをしている場合ではない。
≪もしも、「イグジット」という言葉を発したら、消滅する≫
魔法陣の中身を書き換え、メルに力を込めてもらうと、すぐさま叫ぶ!
「イグジット!」
その叫び声のあと……アイアン・ドラゴンが消滅した。
「……思った通りで良かった。ありがとう、メル、シルフィ」
「あの魔物は、魔法陣で生み出されていたんだね。あんなに細かい魔法陣、メルたん初めてみけど……お兄ちゃんは、どこであれが魔法陣で作り出された物って気付いたの?」
「いや、いっぱいあるんだけどね。例えば、手前にあった、魔法陣を起動させるっていう言葉とか」
プログラムなんてほとんどそうなんだけど、一つの大きなプログラムに延々処理を書き続けるなんてことはまずやらなくて、いろんな部品を作って、それを組み合わせたり、呼び出したりする。
きっと、何らかの条件……おそらく、俺が前にここでディーネに大量の水を出してもらい、それがここまで流れてきてしまって、あの魔法陣が起動してしまったのだと思う。
「けど魔法陣って、予め魔力を込めたり、精霊石の力を使ったりして起動させるものじゃないの?」
「少なくともメルたんはその認識だよ? だけど、あんなにすごい力を使っているのに、精霊石は見当たらないから、何らかの方法で、周囲から自然の魔力を奪って動いていたんだと思う。どうやっているのかは、わからないけど」
どうやら、俺が思っているよりも魔法陣は遥かに奥が深いということはわかった。
とはいえ、周囲の魔力を勝手に奪うようなものを作る気はないけど。