「カイっ! 尻尾がくるっ!」
ディーネの水が途絶えたところで、シルフィの言葉を聞いて再び尻尾を避け……って、さっきからアイアン・ドラゴンは同じ攻撃ばかりだな。
ディーネが大量の水を注いだ時も、その場から動く気配がなく、尻尾を横薙ぎに振るうだけだ。
山でヒュージ・スコーピオンと遭遇した時は、向こうから距離を詰めて来たし、尻尾だけではなく、ハサミで攻撃もしてきたりしたのに。
ちょっと確認してみるか。
アイアン・ドラゴンにある程度近付いたところで足を止める。
完全に無防備な状態だというのに、アイアン・ドラゴンは何もしてこない。
今度はもう少し前に進み……尻尾が飛んできたので、慌てて後ろへ下がる。
「ぱ、パパ!? なにをしているでち!?」
ディーネが慌てているけど、先程攻撃された場所の一歩分後ろだと……うん。やっぱり攻撃してこない。
移動することが出来ないのか、それとも移動する気がないのか……と考え、攻撃されない場所から観察していると、先程ディーネが出した大量の水が存在しないことに気付いた。
「ディーネ、さっきの水は何処に行ったの?」
「えっと……あの魔物の後ろでち。通路があるみたいでち」
なるほど。あの通路の奥を守ろうとしているわけか。
よく見れば、アイアン・ドラゴンの後ろに扉みたいな物もあり……って、その扉が開いているのは、どういうことなんだよ。
ただ、ものすごく古い扉というか、完全に錆びているよな。
錆びて扉が動かなくなったから、代わりにこのアイアン・ドラゴンに守らせたのか?
待てよ。あの魔法陣の書き方に、あの扉と……そういうことかっ!?
「ディーネ、ノエル。力を貸してっ! もしかしたら、アイツを倒せるかもしれない! それから、メルとシルフィは、俺と一緒に来て!」
みんなに俺がやりたいことを説明すると、メルとシルフィを連れて後ろへ下がり、早速実行に移す。
「ノエル、お願い!」
「えぇ! カイちゃんの魔力をもらうわよ!」
ノエルの力で円形の部屋の奥、アイアン・ドラゴンの真下に大きな穴が……開かない!?
石の床なので、ノエルの力で穴を開けることが出来ると思ったのだが、よく見るとアイアン・ドラゴンの下に鉄板のような物が敷かれている。
「メル。あの魔物の下の鉄板に穴を開けたり出来る?」
「任せて! お兄ちゃんの魔力をもらうねっ! えーいっ!」
メルが力を使ってくれたようだが、なぜかアイアン・ドラゴンの下にある鉄板には変化が起こらない。
「……え!? どうして!? 金属なのにメルたんが干渉出来ないなんて……あっ!」
メルも俺と同じことに気付いたらしく、顔を見上げる。
これで俺も確証を得たので、再びノエルとメルに力を使ってもらい、アイアン・ドラゴンが攻撃を仕掛けて来る範囲の場所に、土の塊を置いてもらう。