「ウソ……でしょ!? 金属のドラゴンだなんて!」
おそらく鉄で出来ていると思われる、金属製のドラゴン――アイアン・ドラゴンが顔を俺に向け、ただの穴にしか見えない目を向けているが、その後ろにある太く長い尻尾に土がついている。
どうやら先程ノエルが出した壁を壊したのは、こいつの尻尾のようだ。
「メル! これは何!?」
「わ、わからないよーっ! こんなの知らないもんっ!」
「メルの力で、あれを破壊することは!?」
「や、やってみる! お兄ちゃん、魔力をもらうよっ!」
メルが俺の魔力を使い、金属の塊を撃つ。
だけどアイアン・ドラゴンは、メルの攻撃を嘲笑うかのように、一番薄そうな翼で弾き飛ばしてしまった。
こんなのにどうやって勝てば……でも、こいつを倒さないと、リアが助からない!
何としてでも、倒すしかないんだっ!
金の精霊は、火が苦手……これだっ!
「ファイアッ!」
ラヴィの腕輪から炎を出すと、すぐに一番大きな炎にまで威力を高める。
前方に――アイアン・ドラゴンに向けて炎を発しているけど、腕輪を手にしている俺にも熱さが伝わって来るので、シルフィに頼んで空気の壁を作ってもらい、熱さを防ぐ。
それくらい強力な炎を向けているというのに、やはり薄い翼で防がれ、効いている感じがしない。
一旦、腕輪の炎を止めたところで、
「お兄ちゃんっ! 危ないっ!」
メルの言葉で大きく後ろへ跳び、間一髪アイアン・ドラゴンの横薙ぎの尻尾を回避することが出来た。
「くっ……メル、ありがとう」
「お兄ちゃんが無事で良かったけど……お兄ちゃん。一応、その炎は効いているものの、威力が足りないみたい」
精霊ではなく、精霊石だからだろうか。
最大火力でもあまり効果が無いので、これでは時間が掛かり過ぎてしまい、間に合わないっ!
何か、他に手は……とにかく、やれるだけのことをやってみるしかない!
「ディーネ! あの魔物の上に大量の水を注いでみて!」
「わかったでち! まりょくをもらうでち!」
アイアン・ドラゴンの攻撃から逃げつつ、ディーネに頼んで滝のように水を注いでみると、避けるわけでもなく、動きがおかしくなるわけでもなく、何事もなかったかのように首を動かして、俺の動きを見つめてくる。
魔物なら何かしらの反応を示しても良さそうなものだが。
一方で、金属で出来ているドラゴンが、実は機械だとしたら、漏電とかで壊れそうなんだけど、そんな気配もない。
そもそも、この世界に電力で動く機械が存在するかはわからないが。