前に来た時は、少し進んだところで魔法陣を見つけ、初めて自分で魔法陣を作ったんだ。
で、勝手がわからずに大量の水を出してしまい、横穴に逃げ込んだところで、メルを呼び出したんだよな。
だから、俺が来たことがあるのは、この階段の途中までだ。
この先は何があるかわからないけど、すごく嫌な感じがする。
とはいえ、進まないわけにも行かないので階段を下りて行くものの、上の穴からしか光が入って来ないので、ほとんど先が見えない。
「……そうだ。これで」
ラヴィのお父さんからもらった小さな精霊石を取り出すと、魔法陣を作り出す。
≪もしも、「ランタン」という言葉を発したら、弱い火を灯して周囲を照らし、「アップ」という言葉を発したら、炎を強くする≫
「ランタン」
小さな精霊石だからか、それとも魔法陣の書き方が良かったのか、ろうそくの炎くらいの火が現れ、周囲を少し照らす。
ひとまず、足下と少し先が見えるようになったので、少しずつ進んで行くと、階段が終わり、通路になった。
石で出来た通路を少し進むと、曲がり角となっており、曲がってすぐの所に、宙に浮くようにして魔法陣が仕掛けられている。
≪もしも、二足歩行の者が触れたら、守護獣の魔法陣を起動させる≫
守護獣? 一体何のことだろうか。
ただ、雰囲気的に良くない気はするので、前に階段で魔法陣を見つけた時のように、頭を下げて、魔法陣に触れないようにして奥へ。
その先は、とても広い部屋になっていて……中央に鈍く光る、大きな銀色の彫刻のような物が置かれて……って、動いたっ!?
「もしかして……これが金属の魔物!?」
「た、たぶん、そうだと思うわっ! か、カイちゃん! 魔力を頂戴っ! 防御をっ!」
「ノエル、お願いっ!」
ノエルに魔力の許可を出すと、俺たちの左側に大きな土の壁を出したけど、その壁が粉々になる。
今のは……尻尾!? この魔物は一体なんだ!?
「アップ!」
灯りが小さすぎて金属の魔物の姿が見えないため、明かりを強くしていくと、徐々に周りが見えて始める。
しばらくして、精霊石の明かりが完全に周囲を照らして、この場所が円形の広い部屋だということがわかり……その奥に、鈍く光る銀色のドラゴンがいた。