「へ、へんでち。このみずに、まりょくはたっぷりあるでち。どうして、リアのきのまりょくが、かいふくするなり、なくなるでち!?」

「どういうことなの!? この水でリアは動けるようになるんじゃないの!?」

「そうでち。そのはずでち! でもなぜか、まりょくがリアにわたされるまえに、なくなっちゃうでち」

「い、急いで原因を調べないと!」

 幸いバケツの水はもう一つあるし、夕方になるまでまだ時間はある!

 だから……焦るな俺! 冷静になるんだ!

 とにかく落ち着くようにと自分に言い聞かせながら、原因を調べる……と言っても、魔力のことは俺にはわからないから、みんなに意見を聞くしかないのだが。

「ディーネ。さっきの水で、木の魔力が回復しているのは確かなんだよね?」

「そのとおりでち」

「でも魔力がリアに渡される前に、なくなってしまう……何かに奪われているっていうこと?」

 でも魔力を奪うって、何だ? 何が起きているんだ?

「あっ! もしかして……」

「ノエル、何か心当たりがあるの?」

「えぇ。向こうの土の中に大昔の遺跡があるんだけど、そこに眠っていた大きな金属の魔物が最近目を覚ましたって、他の土の精霊が言っていたの。もしかしたら、そのせいだったりするのかなって思って。木の精霊は、金属が苦手だし」

「金属の魔物!?」

「そうなの。でも金属の魔物なんて聞いたことが無いし、土の精霊たちもわからないって」

 ノエルも詳しいことまではわからないらしいが、土の精霊同士でそんな話が出ているらしい。

 だけど、強大な魔物は自然に存在する魔力を取り込むらしいので、そいつが原因だという可能性は高い。

「金って、確か精霊的には火が苦手なんだっけ」

「う、うん。そうだけど、今から火の精霊を探す……の?」

「そんな時間は無いから、ちょっと頼んでみる」

 そう言って、心配そうに俺たちに目を向けるラヴィのところへ。

「ラヴィ。わけあって、ラヴィの腕輪を少しだけ貸して欲しいんだ」

「えーっと、リアさんのことやんな? えぇよ。カイ先生のことは信じてるし、好きに使って! 将来の旦那様やし、ウチの物はカイ先生の物やで」

 さすがにそれは気が早過ぎるんだけど、今はその言葉に甘えて、腕輪を借りる。

 再びラヴィにリアのことをお願いすると、シルフィの力を借りて、一気に遺跡へ飛ぶ。

「確か……ここだね」

「うん。メルたんが作った蓋だから、消すことも出来る。お兄ちゃん、魔力をもらうね」

 メルが俺の力を使い、以前に遺跡へ来た時に出してもらった、金属の重厚な蓋を取り除く。

「うーん。何て言うか、空気が悪いね」

「まえにきたときよりも、へんなかんじがするでち」

「カイちゃん。この先にいると思うわ。気を付けて」

 シルフィ、ディーネ、ノエルの言葉を聞きながら、階段を下りて行く。