そう言って、ノエルが俺の胸辺りまでの高さの壁を出し、みんなを囲んだ。
さて、ここからが本番だ。
「次は魔法陣に力を」
「いいわよ。これで、カイちゃんの作った魔法陣は動くわ」
「ありがとう……スタート!」
俺の言葉に応じて、魔法陣に面している土……ノエルが先程作り出してくれた壁がゆっくりと動き出し、その中にいる俺たちや、シルフィが出してくれた空気の壁も前に動き出す。
よし、ここまでは問題無いな。
「みんな、しっかり捕まって! 行くよ……ダウン!」
俺の言葉に応じて、魔法陣の速度がマイナスになり、一気にとんでもない速度へ急加速する!
日本で学生時代に乗った、遊園地のジェットコースターを思い出すが……それよりも速いかもしれない。
ただ、速度は速いけど、シルフィの空気の壁のおかげで、風を感じないのは助かる。
これがなければ、息が出来なかったかもしれない。
ただ、誰もしゃべることなく、ものすごく長い時間が……いや、もしかしたら短い時間だったのかもしれないけど、あっという間にリアの木が見えてきた。
「ディーネ、シルフィ! 頼むよ!」
「ま、まかせるでち……」
「任せてっ! ディーネ、やるよっ!」
シルフィが俺の服の中に手を入れ、ディーネと触れ合っているのを確認したので、魔法陣を止める!
「ストップ!」
俺の言葉で土の壁が急停止し、前に吹き飛ばされた!
「パパ!」
「カイ!」
「二人とも、お願いっ!」
ディーネが前方に水を出し、シルフィが空気の壁でその水を覆う。
吹き飛びながら、即席のウォーターベッドを作り出すと、そこへ俺やメルのバケツが突っ込み……うん。何とか、無事に到着することが出来た。
陽も傾いてはいるものの、沈んでもいないし、これなら大丈夫だろう。
バケツから水が漏れたりもしていないので、そのままディーネの木へ運んで行く。
「カイ先生! おかえりなさいっ! いつの間に帰って来たん?」
「今しがたね。ラヴィ、リアのことをみてくれていて、ありがとう。これで良くなるはずだよ」
リアの傍にずっといてくれたラヴィに礼を言うと、まずはメルに一つ目のバケツの蓋を開けてもらう。
「ディーネ。じゃあ、この水を木にかけるよ?」
「はいでち。それで、リアはうごけるようになるハズでち」
ディーネに言われた通り、一つ目のバケツの水をリアの木の根元へ。
ディーネの話では、バケツ一杯でも数日動けるだけの魔力が回復するという話だったが……リアが目覚める気配がない。