既に山から平地に来ていたので、シルフィに一旦地面に下りてもらうと、みんなに協力してもらって、準備をする。

「お兄ちゃん。出来たけど……これで大丈夫?」

「あぁ、完璧だよ。ありがとう」

「う、うん。バケツの強度を上げたのと、蓋を付けただけだけどね」

 まずは、メルの力で水が零れないようにした。

「パパー! シルフィとのがったいわざ、うまくいったでちー!」

「うん。カイにお願いされたことは出来そうだね! ただ、こんなことは、やったことがないけど」

 次に、ディーネとシルフィに協力してもらい、あるものを作った。

 正直言って、これが上手くいかなかったら、俺は痛いで済まないのだが、リアが消えてしまうことに比べれば大したことは無い。

「ディーネもシルフィも、無理を言ってごめん。特にシルフィは、来てもらったばかりなのに」

「別に構わないよー! 困っている精霊を助けようとしているわけだしね。それより、一応ボクとディーネとでカイを守るつもりではいるけど、本当に大丈夫?」

「……き、きっと何とかなるよ」

 事前に出来ることの確認はしてもらったけど、実質ぶっつけ本番だからね。

 とりあえず、ディーネとシルフィを信じよう。

 そして、最後にノエルだ。

「ノエル。正直、一番キツいことを頼むんだけど……」

「ふふっ、リアちゃんのためでしょ。任せて! カイちゃんのアイディアを実現させてみせるわ。だから、上手くいったら、リアちゃんと一緒にいーっぱい、ギューってさせてね」

「うん、わかったよ。じゃあ……みんな! 行くよっ!」

 そう言って、魔法陣を作る。


≪もしも、「スタート」という言葉を発したら、面している土と共に前方へ動き、「アップ」という言葉を発したら、移動速度を速くし、「ダウン」という言葉を発したら、移動速度を遅くし、「ストップ」という言葉を発したら止まる≫


 前に兎耳族の村へ向かった時に作った魔法陣とまったく同じものだ。

 魔法陣の真ん中に乗り、メルに作ってもらったバケツを二つ置く。

 ディーネが俺の服の中に入り、首元から顔を出すと、メルとシルフィが俺の両脇に抱きついてきた。

 最後にノエルが後ろから俺を抱きしめ、準備完了だ。

「シルフィ。壁をお願い」

「オッケー! カイの魔力をもらうね」

 シルフィの言葉で、うっすらと俺たちの周りを空気の壁が取り囲む。

「次は、ノエルも壁を」

「えぇ、任せて。カイちゃんの魔力をもらうわね」