「説明は戻ったらするけど、俺はそのリアを助けたいんだよ」

「……わかった! まだ何のことか全然わかってへんけど、とにかくリアを守ったらえーねんな? ウチに任せとき! 将来の旦那さんの頼みや! 魔物が来ても追い返したるわ!」

 ひとまずリアをラヴィに看てもらうことにして、早速シルフィに力を借りる。

「行くのはカイだけだよね? その兎耳族の女の子はお留守番で良いんだよね?」

「うん。頼むよ」

「わかった。じゃあ、カイ。魔力をもらうよ」

 シルフィの言葉で、俺の身体が浮かび上がり……メルとノエルが慌てて抱きついて来た。

「みんな一緒に行くの!?」

「当然! お兄ちゃんと離れるわけないでしょ」

「ママもカイちゃんの傍にいるわよ」

 気付けば、ディーネも既に俺の服の中へ入っている。

「カイ。ボクの力はカイにしか有効じゃないけど、他の精霊がどれだけカイにくっついても、速度は変わらないから、安心して」

 シルフィから、メルやノエルがいても影響がないという話を聞いたので、一緒に行くことにして、メルの身体をぎゅっと抱きしめる。

 なんでも、風の精霊は少し特殊らしくて、木や水、金や土の誰とも相性が良いというのが無い代わりに、苦手な精霊もいないそうだ。

「あぁぁぁ、お兄ちゃんに抱きしめてもらえるなんて……シルフィさんの力は何て素敵なんでしょうか」

「落ちたらマズいと思ったんだけど……メルは別に自力で平気なのかな」

「お、お兄ちゃん!? しっかり! しっかりメルたんを抱きしめてください!」

 ノエルは俺が抱きしめるより力強く抱きついてきているから、きっと大丈夫だろう。

 というわけで、大丈夫だとシルフィに伝えると、さらに高度が上がっていく。

「じゃあ、出発するよ! 行っくよー!」

 俺と併走するシルフィは、ものすごい速さで空を飛び、文字通り景色が飛ぶように流れていく。

 ただ、飛びながら周囲の風も一緒に動かしているのか、それともシールドみたいなのを貼っているのかはわからないが、ほとんど風を感じないのはすごいな。

「あははは! すっごくたのしいでちー!」

「はぁはぁ……お、お兄ちゃん」

「か、カイちゃぁぁぁんっ! シルフィちゃーん! ママにも風の防壁をぉぉぉっ!」

 ディーネは楽しそうで、メルは息苦しいのか、呼吸が荒い。

 ノエルに至っては、かなりヤバそうな雰囲気を感じるのだが……あ、シルフィがノエルの要望に応えて良いかと聞いて来たので、即答で許可を出しておいた。


 それから、シルフィの力でしばらく空を飛ぶと、遂に山が見えて来た。

 ただ、その山まではずっと平地が続き、街や村といったものはない。

もしかしたら、兎耳族のような地中で生活する者たちの村は、あるのかもしれないけど。

「パパ、シルフィ! あっちでち! このまままっすぐいってほしいでち!」

「シルフィ、お願い! ディーネの指し示す方へ進んでほしい」