それこそ、空でも飛ばないと……って、待てよ!

「ディーネ! 風……風の精霊っていないの!? 元々聞いていた精霊は、木、水、金、土、火の五種類だったけど、昨日氷を作った時に、別の精霊の担当だって言っていたよね!? 五種類以外にも精霊はいるんだよね!?」

「いるでち……けど、かぜのせいれいシルフは、きまぐれでち。きょうりょくしてくれるか、わからないでち」

「協力してくれるかわからなくても、協力してもらうんだ! 風の精霊シルフ! 出て来てくれっ!」

 大声で叫び、風の精霊を呼びだそうとしたけれど、どういうわけか何も起こらない。

「なぜっ!? 風の精霊シルフっていうのがいるんだよね!?」

「パパ……いま、かぜがふいていないでち」

 そうだった。精霊の力を借りるには、その借りる元が自然に存在している必要がある。

 だけど、風が吹くのを待っている時間なんて無い!

 何か……何か手段はないのか!? リアを助けるために……そうだ!

「ぱ、パパ!? なにをつくっているでち!?」

「風が吹いていないから、風が吹いているところへ行ってくる!」

「え!? どういうことでち!?」

 ディーネに説明するよりもやってみせた方が早いと考え、リアを木の根元に座らせると、大慌てで魔法陣を作る。


≪もしも、人が触れたら、真上に吹き飛ばす≫


「ディーネ! これに力を込めてほしい!」

「ま、まつでし! これじゃあ、パパがおおけがするでち!」

「大丈夫だよ。ほら、この橋の上で使うから。そうすれば、落ちるのは堀の中だ。高い所から落ちても、水に落下するなら大丈夫だよ」

「え……ほんとうでち? パパがケガしたりしないでち?」

「うん、大丈夫! それより、リアに時間がないから、お願いっ!」

「うぅ……ほんとうに、むりしないでほちいでち」

 そう言いながらも、ディーネが魔法陣に力を込めてくれたので、躊躇なく魔法陣の上へ。

 踏んだ瞬間、魔物を飛ばす時のように水が噴き出てきて、俺の身体を真上に飛ばす。

 どれくらい飛んだかはわからないけど、少なくともリアの木よりは遥かに高い所で上昇が止まり、一瞬無重力状態になったので、先程同様に風の精霊に呼びかける!

「風の精霊シルフ! 出て来てっ!」

 俺の言葉に反応し、十歳くらいに見える銀髪の女の子が現れた。

 思った通りだ! 高い場所なら風が吹いていると思ったんだよ。

「やぁ! ボクはシルフィって言うんだ」

「良かった。俺はカイって言うんだけど、力を貸してほし……」

「……って、カイーっ! どこに行くのーっ!?」

 上手く風の精霊シルフィが現れたけど、自己紹介も碌に出来ないまま落下していく。