堀の外側でラヴィと一緒に焼きコーン……というか、焼きトウモロコシを食べ終え、安全のために使い終わった精霊石を取り出すと、ディーネがやってきた。
「パパ……きてほしいでち」
いつもと様子が違うディーネに呼ばれ、ラヴィを残してリアの所へ。
普段は木の傍にリアが立っているんだけど……何か様子が変だ。
「リア! どうしたの!?」
「あ、カイ君。ごめんね。リアお姉ちゃん……もっとカイ君と一緒にいてあげたかったんだけど、思っていた以上に早く時間が来ちゃったみたい」
「えっ!? 時間……って、一体何の話をしているのっ!?」
「あのね。リアお姉ちゃんは、この木に宿っていて、この木から魔力をもらって具現化しているの。だけど、この木の魔力がもう尽きかけているのよ」
そう言って、立っているのも辛そうに、リアが俺に抱きついてきた。
いつもなら、ここにメルやノエルが混ざって来そうなものだけど、二人共ジッと下を向いて動かない。
それはまるで、リアの最期の時を邪魔しないようにしているかのように見えてしまう。
「ま、待って。その木の魔力が無くなるっていうのなら、ディーネたちみたいに、俺の魔力を使う様にすれば良いんじゃないの!?」
「残念ながら、精霊は宿り主を変えることが出来ないの」
「そ、それなら、俺の魔力をこの木に分けられないの!? 俺は、魔力が多い人間なんだよね!? リアの分を与えるくらいの魔力はあるんだよねっ!?」
「カイ君。魔力の受け渡しが出来るのは、その魔力を持つ者だけなの。カイ君が魔力を分け与えるようなスキルを持っていれば可能性はあるけど、そもそも自身の魔力を宿っている精霊以外に渡すなんて、誰も出来ないと思うわ」
そ、そんな……だったら、どうすれば良いんだ!?
俺はリアに食べ物や寝床に、この世界の知識……色んな物を沢山与えてもらっていて、リアが助けてくれなければ、すぐに死んでいたんだ。
それなのに、俺はまだ何もリアに恩返しが出来ていないっ!
「あっ! ま、まさか。この木の魔力がなくなったのって、俺がいろんな物をもらったから!?」
「そ、それは……でも、待って! 私は、カイ君が来てくれたことで本当に救われたの。もう何十年も独りぼっちで、誰とも話すことなく、ただ時が過ぎるのを耐えていただけなの! カイ君が来てくれたから、私はすごく楽しい時間を過ごせたの! 本当に、すごく幸せだったんだよ! ……ありがとう」
「り、リア!? リアっ!」
リアが最期の力を振り絞るように叫ぶと、突然身体から力が抜けたかのように、俺に覆いかぶさってきた。
嘘だろ!? 嘘だって言ってくれ!
「そ、そうだ! メルの時は助けることが出来たんだ! リアっ! 戻って来てっ!」
以前に具現化している魔力を使い、消えかけていたメルを助けた時の様に、何度もリアを抱きしめたけど、リアはピクリとも動かず、何も反応してくれない。
どうすれば……どうすればリアを助けることが出来るんだっ!?