そう思いながらしばらく進むと、
「カイちゃん。兎耳族さんたちの村の入り口なら、そこよ」
「えっ!? スト……ダウン! ダウン、ストップ!」
あ、危ない。思わず急停止して、結局ノエルと同じことをしでかす所だった。
「残念。カイちゃんを抱きしめるために、あえて通り過ぎるタイミングで言ったのに」
「ノエル……」
「じょ、冗談よ? 冗談だからね? カイちゃーん!」
ひとまず、無事に到着することが出来たので、ニンジンを持って穴の中へ……って、ニンジンの籠が穴に入らないんだけどっ!
「ラヴィー! 来れたら来てー! ニンジンが多過ぎて中に入らないんだー!」
穴の中に向かって叫んでみると、少ししてラヴィが……というか、ラヴィのお父さんや、お母さんもかな? 頭から兎の耳が生えている人たちが数人出て来た。
「おぉぉ! まさか、僅か二日でニンジンを大量に作り出すなんて」
「おとん! ほらなー! だから言うたやろー? カイ先生はすごいんやって! きっとウチらには見えてへんけど、きっとその辺りに精霊たちを侍らせてるんやで? 精霊ハーレムやで!」
いや、ラヴィ。ディーネたちがここにいるのはその通りだけど、精霊ハーレムって何なんだよ。
「ご依頼いただいた通り、ニンジンを百本用意いたしましたので、ご確認いただけますか?」
「いえ、確認するまでもなく、これだけあれば十分です。あなたがすごい魔法使いだということを疑ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。それから、これをどうぞ」
そう言って、ラヴィのお父さんが小さな箱を手渡してきた。
「あの、これは?」
「ラヴィが持っているもの程の大きさはないのですが、火の精霊の力を込めた精霊石です。お持ちください」
「えっ!? よ、宜しいのですか!?」
「はい。ニンジンと娘がお世話になっているお礼です」
もしかして、これで遠慮なく料理が出来るってこと!?
ラヴィの腕輪も借りられたら、コンロが二つになって、スープを作りながら鳥を焼いたり出来るな。
「おとんも、おかんも、カイ先生のすごさがわかったし、またウチも勉強しに行ってえーやろ? ちゃんと定期的に帰って来るし、ゆくゆくはカイ先生とウチは結婚するんやし」
「ごはぁっ! け、結婚はさておき、カイさんの所で魔法の勉強をさせてもらうのは良いと思うぞ。魔法の勉強をな」
「おとんは、何で同じことを二回言ったん? というか、魔法以外に何の勉強するん?」
「えっ!? いやその、だ……大事なことだから、二回言ったんだ」
日本でも俺に子供はいなかったけど、ラヴィのお父さんの気持ちはよくわかる。
だけど、ラヴィに手を出したりすることはないので、安心して欲しい。万が一そんなことをしでかしたら、リアやノエルから何を言われるか。
そして、ディーネやメルから質問攻めに遭い、何て説明をすれば良いかわからなくなるのが目に見えているからね。