とりあえず、ノエルが畑を作る場所の土を耕してくれているので、その間に俺はメルに頼んで鍬を作ってもらった。
「そうそう、そういうの! そういう道具を使って、土を盛り上げて畝を作るのよ」
ノエルがもう入っても大丈夫だと言ってくれたので、早速鍬を持って土の上へ。
ノエルがしっかり耕してくれたようで、フワフワになっている土を、鍬で盛っていく。
「カイちゃん、頑張ってー!」
「パパー、おみずのむでち」
「お兄ちゃん。休憩も大事だよー!」
ノエル、ディーネ、メルから応援してもらって頑張っていると、リアがなぜか申し訳なさそうにしてやって来た。
「カイ君、ごめんね。リアお姉ちゃんが沢山ニンジンを作れなくて」
「待って待って。リアは何も悪くないよ。だから、謝ったりしないで」
「でも……」
「これは俺がラヴィの精霊石を使い過ぎてしまったから、その代償としてやっているわけだし、そもそもリアはご飯を作ってくれたりしているでしょ? 俺は本当にリアへ感謝しているんだからさ」
そう言うと、リアが俺をぎゅっと抱きしめ、ご飯を準備しながら応援する……と、木の傍へ戻って行った。
よし。リアに変な負い目を感じさせないようにするためにも、頑張ってニンジンを作るんだ!
というわけで、畝作りを再開し、土を盛っていく。
サクッ! フワッ! サクッ! フワッ!
ノエルが土を柔らかくしてくれているから、鍬が簡単に地面へ刺さって土を盛れる。
だけど、ようやく一列分の畝が出来たと思った時には、夕方になっていた。
おそらく、事前にノエルが柔らかくしてくれていなければ、一列だけでももっと時間が掛かっていたのだろう。
それから、リアが用意してくれていたサラダや果物をいただき、ディーネが浴槽へ出してくれた水で汗を流す。
「カイ君、お疲れ様。リアお姉ちゃんが背中を洗ってあげるね」
「リア!? 自分で洗えるってば」
「まぁまぁ、お兄ちゃん。リアさんが洗ってくれるって言っているし、洗ってもらおうよー!」
あれ? いつものメルなら、リアを止めるか、自分が洗うって言いだしそうなのに、今日はリアに譲るんだ。
俺、何かメルを怒らせるようなことをしでかしたのかな?
「あ、違うよー? メルたんは、今日一日お兄ちゃんといっぱい一緒に過ごしたし、裸もバッチリ見たから、リアさんに譲ってあげようと思っただけだよ」
俺から魔力をもらっているメルに考えが伝わって、本人からフォローされてしまった。
「ちょ、ちょっと待って! メルちゃんがカイ君と一緒にいたのは知っているけど、裸を見たってどういうことー!? 何があったの!? その辺、詳しく!」
「お兄ちゃんがディーネちゃんの力を使ったんだけどねー、有効範囲が広すぎたというか、お兄ちゃんも巻き添えになったというか……」
「まってほしいでち! ディーネはわるくないでちー!」
良かった。何となく違和感を覚えた気がしたけど、どうやら気のせいだったみたいだ。