そう言って、ノエルが精霊の力で俺の指定した場所の地表を綺麗にしていく。

 しかし、この場所だけ草や小石が土の中に入っていくんだけど、土の中に沈んでいるのだとしたら、根菜のニンジンにはあまり良くないんじゃないのかな?

「ノエル。この草や石って、土の中に残るんだよね?」

「そうよ。でも、小石は土の中で粉砕して砂みたいになるわよ」

「すごっ! そうなんだ」

「えぇ。そして、この後でしっかり土の中をかき混ぜるから、小石は完全に消えちゃうわね」

 小石が完全に消えるってすごいな。

 元々、俺の拳大の石が落ちていたけど、あれも完全に消えちゃったってことか。

「あれ? 小石は……って、草は違うの?」

「えぇ。土の精霊は木の精霊と相性が悪いから。そして、草も木と同じ植物だからね。だから、草は粉砕せずに、そのまま地中深くへ沈めちゃうの。そうね、カイちゃんを縦に十人並べたくらいの深さだから、ニンジンの発育に影響はないと思うわよ」

 いや、深すぎるよっ!

 仮に僕の身長を百五十センチくらいだとしたら、十五メートルだよ!?

 マンション五階建て分くらいの深さまで沈めなくても、ニンジンに影響は無いと思うんだけど。

 そんなことを考えている内に、指定した場所が一切草の生えていない学校のグラウンドみたいになる。

「こんなに短時間ですごいね」

「カイちゃん! まだダメっ! 今は地中で土を混ぜているから! 今、足を踏み入れたら大変なことになっちゃうわよ!」

 こ、怖っ!

 ノエルが抱き止めてくれて良かった。

 危うく巻き込まれるところだよっ!

「むー、お兄ちゃん。ノエルさんと抱きつき過ぎー! メルたんもー!」

「メルっ! そっちは危ないっ! 入っちゃダメだっ!」

「お、お兄ちゃん! えへへ、こんなに強く抱きしめてくれて……メルたん、嬉しい!」

 メルがノエルの話を聞いていなかったのか、入ってはいけないと言われた場所に立っていたので、大慌てて抱き上げたんだけど……良かった。何ともないみたいだ。

「メル。あの場所は危ないんだ。入っちゃいけないってノエルが言っていたよね?」

 メルは幼いけど……いや、幼いからこそ危ないことはしっかり注意しておかなくちゃ!

「あの、カイちゃん。メルちゃんは金の精霊だから、土の中に入ってもまったく問題ないわよ? それどころか、相性が良いから、メルちゃんは土の中に入っていた方が元気になるわ」

 うん。この世界の精霊の相性の話で、俺の注意が完全に無駄になった。

 それどころか、元気になる場所から引っ張り出してしまい、むしろ俺の行動がマイナスになっているくらいなのか。