「カイちゃん。ママからの提案なんだけど、リアちゃんにニンジンの種を出してもらうっていうのはどうかしら。ママの土の力を使えば、リアちゃんみたいに急成長はさせられないけど、その代わりに同時に沢山育てることが出来るわよ」
「なるほど。今回は数が数だから、そっちの方が良いかも! リア、ノエル。お願い出来る?」
「私はカイ君のためだったら、何でも協力するよ。あと、種ならそこまで負担も大きくないからね。任せて!」
というわけで、リアが何本かのニンジンを植えると、すごい速さで成長させ、白い花が咲く。
俺が日本で食べていたニンジンの花と、この花が同じかはわからないけど、花が枯れ、大量の種が手に入った。
「これで百個くらいはあると思うよ。足りなければ、また言ってね」
「ありがとう、リア。すごく助かるよ」
「えへへ。じゃあ、カイ君。種を作ったご褒美に、ぎゅーって私にハグ……って、カイ君!? ノエルさんと畑の話をする前に、思い出をぉぉぉーっ!」
リアが良くわからないことを言っているけど、毎日一緒にいるよね?
ひとまずリアには、後で改めてお礼を言うとして、陽が沈む前に畑のことを決めてしまいたい。
「ノエル。ニンジン百本っていうと、この堀で囲まれた範囲に収まるかな?」
「んー、大丈夫だと思うわよ」
「じゃあ、早速種を……」
「待って待って。カイちゃん、焦っちゃダメよ。畑を作る時は、いろいろと準備があるんだから」
そう言って、ノエルが畑を作るために必要なことを教えてくれる。
まずは陽当たりの話から始まり、小石や草を取り除いたら、しっかり耕して、土に空気を含ませたり細かくしたり。それから、ようやく畝を作って、種を撒くそうだ。
「まぁ長々と話したんだけど、実は陽当たりの良い場所さえカイちゃんが決めてくれたら、ママが畝作りの手前までは出来ちゃうんだけどね」
「え? そうなの?」
「えぇ。土の中の話なら、ママの本領発揮だもの。ただ、畝はママが作ると土が硬くなっちゃうから、そこはカイ君に頑張ってもらう必要があるけど」
「わかった。頑張るよ。あ……そういえば、肥料とかは良いの?」
「えぇ。植物に力を与えるのは、土もそうだけど、お水の方が大事だから、ディーネちゃんに力を借りると良いわよ」
水の方が大事……農業はやったことがないけど、日本だと水も土も、どっちも重要だって考えそうな気がする。
ただ、この世界は精霊の相性があって、木は水と相性が良いって言っていたっけ。
で、水は土が苦手で、すぐに水が汚れてしまうので、都度植物に水をあげないといけないって感じらしい。
「じゃあ、カイちゃん。まずは場所だけど……ここで良いのかしら?」
「うん。堀の内側で、垣根もリアの木も影にならない場所だからね」
「わかったわ。じゃあ、さっき言った通りで、この範囲の草の根や小石を取り除くわね。カイちゃんの魔力をもらうけど……ちょーっと危ないから、近付かないようにね」