動く地面の上にしゃがみ込み、叫ぶディーネとメルを必死に抱きしめる。

「みんな、大丈夫よ。カイちゃんも、ママに身体を預けてね。そうすれば、あっという間に着いちゃうから」

 俺の後ろにノエルが立っているけど、土の精霊だけあってか、動いている地面とくっついているみたいに、ビクともしない。

 なので、少しだけ安心して……って、ちょっと待った! 早くもリアの木が見えて来たけど、この速度で急停止したら、さすがに吹き飛ばされるんじゃない!?

「ノエル! 速度っ! 速度ぉぉぉっ!」

「え? カイちゃんは、もっと速い方が良いの?」

「逆だよっ! 速度を徐々に落として、急停止は絶対にしちゃダメだからねっ!?」

「大丈夫、大丈夫。そろそろ、到着よー」

 ノエルはちゃんとわかっていたのか、少しずつ速度が落ちてきたので、ホッと胸を撫でおろしていると、最後の最後で急に止まる。

 速度が落ちてきていたとはいえ、手すりもつり革も何も無い状態なので、当然俺たちは前に吹き飛び……柔らかい何かに包まれる。

 大きくて柔らかくて、温かいクッションみたいなもので優しく受け止められたけど、これは何だ?

「うふふ。カイちゃんからママの胸に飛び込んで来てくれるのは、嬉しいわね」

 いや、ノエルは何をしているんだよっ!

 後ろに立っていたはずのノエルがいつの間にか俺たちの前にいて、顔からダイブ……って、本当にそういうのはやめてくれないだろうか。

「むー……お兄ちゃん! メルたんにも飛び込んできて!」

 いや、メルはさっきまでずっと抱きついていたよね?

 なぜか不満そうに頬を膨らませるメルはさておき、ノエルが言っていた通り、陽が沈む前にリアの所へ帰って来られた。

「カイ君! おかえりなさいっ!」

「えっと、リア。そんなに強く抱きしめなくても……」

「だって私がいない間、絶対にノエルさんに抱きつかれたりしてそうだもん! カイ君が私のことを忘れないように、しっかり抱きしめるの!」

 いや、俺がリアのことを忘れるわけないんだが。

 リアは一体何の心配をしているのだろうかと苦笑しながら、本題へ入るために一旦放してもらおうと……って、放してくれないの!? まぁこのまま説明するか。

「リア。一つお願いがあって、兎耳族の村長さんから、ニンジンを持って来て欲しいって言われているんだけど、お願い出来るかな?」

「ニンジン? いいよ。何本くらい必要なの?」

「百本なんだけど」

「えっ……百本かぁ。うーん……作れなくはないんだけど、一気に作るのは大変かも」

 まぁそうだよな。

 いつもリアは植物を一つずつ出していて、同時に出したりはしていない。

 植えて、成長させて、収穫してっていうのを一本ずつやるとなると、かなり時間が掛かるし、リアも疲れちゃうよな。