「はい、あーん。カイ君、次はどれにする?」
「えっと、じゃあ……バナナで」
「いいわよ。じゃあ、綺麗に皮を剥いてあげるねー」
先程同様にリアがバナナを食べさせてくれたのだが……の、喉に詰まるっ!
「あ、あの……」
「ん? カイ君、どうしたのかな? して欲しいことがあれば、何でも言ってね」
「えっと、何か飲み物を……」
「あっ、ごめんねっ! 今すぐ用意するから待ってて!」
飲み物を……と出してもらったココナッツミルクを飲み、一つ気付いたことがある。
「リアさんが使える魔法って、植物に関する魔法なんですか?」
「んー……植物を生やしたり、動かしたりは出来るかな。私は木の精霊のドリアードだから」
「なるほど……って、精霊!? ドリアード!?」
「カイ君は知ってたんじゃないの? 精霊語を話しているし」
「精霊語!?」
「うん。カイ君の精霊語、完璧だよ! 精霊語が話せる人間族なんて、たぶん数百年前の賢者さんくらいじゃないかな? 私が生まれる前のことだから、あんまり詳しくないけど」
そっかー。異世界で人を見つけたと思って話しかけたら、精霊だったのか。
……この世界の精霊って、どういう存在なんだ? とりあえず、人間を嫌っているって感じはしないけど。
「えっと、リアさんとは普通に会話出来ていますけど、この文字って読めます?」
「ん? どんなのかな?」
リア曰く、精霊語を話しているらしいけど、俺としては日本語で普通に話しているだけだ。
なので、実は自動翻訳スキルが発動しているのではないかと思い、指で地面に文字を書いてみることにした。
≪こんにちは≫
「えぇ、こんにちは。カイ君は上手に字が書けるのね」
どうやら平仮名は読めるらしい。相変わらず子供扱いはされているけど。
とりあえず次だ。
≪今日は天気が良いですね≫
「そうだね。というか、今は乾季だから、ほとんど雨なんて降らないけどね」
漢字も読めると。それなら、これはどうだろう?
≪HELLO≫
「ん? カイ君。その文字はなぁに?」
「あ、わからなければ、良いです。気にしないでください」
英語だと伝わらないということは、やっぱり自動翻訳スキルとかではなくて、精霊の言葉が日本語だったってことか。
あ、危ない。精霊の言葉が日本語でなければ、リアに出会えても会話が出来ず、詰んでいたかもしれなかったんだな。